本書の概略
突然世界を襲ったコロナ禍は、人々が幸福について考え直す新たな機会を与えた。社会の変化にともなう人間の心理変化を研究してきた著者は、最新の研究データを提示しながら、私たちが幸福についてもう一度立ち止まって熟考するヒントを与える。今までの価値観が大きく変わったことを理解した読者は、常識にとらわれない新しい幸福の形を自ら考え始めるだろう。単なる観念論や難解な専門分析ではなく、ユーモアを交えたエッセイ形式の本書は、気楽に読める新しい幸福論だ。
PART1では、コロナ禍以降に変わった幸福の3つの変化を紹介する。
(1) 幸福の天才の秘密
「幸福な人の特徴」を改めて定義する。今の時代には、決心の固くない人、あえて知る必要のないことに無関心な人、「何となく」の価値がわかる人などが真の「幸福の天才」だ。幸福の形は前よりずっと多様になった。
(2) 幸福の「負け犬」の時代がやって来た
今までは外向的な人が幸福だと思われていたが、今は「ソーシャルディスタンス」に慣れた、どちらかといえば内向型の人の幸福度がより高くなった。与えられた役割を黙々とこなす人、「面白さ」より「意味」を求める人生の価値も高まっている。
(3) 幸福にも品格が必要
富の成長や出世だけでなく「意味の成長」に関心を持つべきだ。他人に勝って成功することが幸福だと教えられてきたが、自分の専門外で潔く「負けられる」人が増えれば、私たちの社会はより幸福になれる。
PART2は、ふだんの生活で著者が感じた短いトピックで構成される。
家族間の会話、職場の上司とのエピソード、旅行に行きたい理由、冗談の価値など、共感できる事例をたくさん挙げる。特に、日常の瞬間で見過ごしがちなひらめきは、幸福という感情が大げさでないはないことを認識させる。ただ日常の人生をうまく生きていくこと、食事、仕事、会話など日々繰り返されるささやかなことの中に、より深く入り込めることがまさに幸福だ。
目次
まえがき 普通主義者の幸福
PART 1 幸福に関する軽くて本当の話
第1章 幸福の天才たち
— 普通の日常を幸福にする彼らの秘訣
第2章 幸福の負け犬
— 今まで気後れしていた幸福の非主流たちの出番だ
第3章 幸福の実践者たち
— 道徳と幸福が分れた時代、幸福に品格と倫理を加える
PART 2 幸福に関するまじめな冗談
第1章 幸福には特別なことはない
第2章 人生を感嘆詞で埋めたいなら
日本でのアピールポイント
韓国も日本も関係なく、コロナ禍は世の中の状況を一変させ、人々の心理にも大きな影響を及ぼし、今までの価値観は明らかに変わりつつある。私たちがコロナ禍の前まで当然だと思っていた幸福感やその基準が具体的にどう変わったか、著者はわかりやすく解説してくれる。そして、それをもとに、私たちが人生に向き合う姿勢を変えることを受け入れ、新しい幸福の形を求めるためのヒントを語りかける。
本書に書かれた「幸福の変化」はそのまま日本にもあてはまる内容であり、アフターコロナを見据えて生きて行こうとする日本の読者の心にも著者の提言は強く響くだろう。