『僕の狂ったフェミ彼女』(加藤慧訳、イースト・プレス)で多くの人気を集めたミン・ジヒョンの2冊目の邦訳作品『私の最高の彼氏とその彼女』。主人公のミレ(「未来」の意)は34歳の独身女性。誰かの〝所有〟になったり、社会が決めた〝役割〟をこなしたりしなければならない「恋愛」や「結婚」に拒否感を抱いています。そんな彼女が、理想の男性シウォンの提案により〝オープン・リレーションシップ〟の恋愛をすることになるのですが……。社会やメディアがつくってきた「恋愛のシナリオ」に異を唱え、女性が自分の境界線を大切にし、よりよい人生を歩んでいくことに関心を寄せる著者の強い意気込みを感じる作品です。訳者の加藤慧さんからメッセージをいただきましたので、ご紹介します。
お互いを〝所有〟し合うことなく、自分らしいままで恋愛がしたいと悩む主人公ミレ。完璧な理想のタイプで密かに憧れていた職場の〝推し〟的存在、シウォンと急接近しますが、なんと〝オープン・リレーションシップ〟の交際を申し込まれます。果たしてミレはこの恋愛を通して、自分に合った愛のかたちを見つけられるのでしょうか。
思わず二度見してしまうタイトルかもしれません。そして〝オープン・リレーションシップ〟や〝ポリアモリー〟というキーワードを見て、眉をひそめる人もいるかもしれません。これらの概念について、なんだか「軽い」とか、「不誠実」というイメージをお持ちの方もいるでしょう。
でも、そのイメージはどこから来ているのでしょうか。おそらく「普通」のかたちと違うから、という理由だと思います。果たしてそこから外れるからというだけで、「おかしい」こと、「悪い」ことなのでしょうか?
読んでいただくと、社会、そして自分のなかのあらゆる「当たり前」、「普通」に気付かされると思います。長い間、何の疑問も持たずに信じてきた常識を取り払うのは、容易いことではないかもしれません。ミレもはじめはそうでした。ぜひミレと一緒に、戸惑いも葛藤も追体験して、著者の問いかけに向き合ってみていただきたいです!(加藤慧)