感情があらがう時  -自分自身についてまだわかっていない大人のための心理学の旅- (감정이 아니라고 말할 때 -아직도 나를 모르는 어른들을 위한 심리학 여행-)

原題
감정이 아니라고 말할 때 -아직도 나를 모르는 어른들을 위한 심리학 여행-
著者
ソン・ユミ
出版日
2021年10月15日
発行元
タサンブックス
ISBN
9791130641416
ページ数
362ページ
定価
17,000ウォン
分野
人文

●本書の概略

すべての人が生まれてから死ぬまで持ち続ける「感情」について、感情はどうやって生まれどのように行動につながるのか、そして抑圧され続けた感情はどうなるのか。自分自身の内面の感情や直感をないがしろにしたまま年月を重ねた人は、社会的な成功を収めていても人生にむなしさを覚えてしまうという。本書は、読者が感情のシステムを理解し、自分の感情を深く読み取り自分自身をよく知ることが、他人の言動に振り回されないために必要だと説く。
精神科医である著者の知識や経験に基づいた解説を基本としながら、実際の診療の場でのエピソードや、誰もが経験する自分自身のやっかいな感情への対処の仕方について的確なアドバイスも盛り込まれている。

●目次

序文 生きるのは、なぜこんなにもつまらないのか?
第1部 感情に対する誤解を解け
第2部 お母さんのおなかの中にいる時から生涯を共にするパートナー
第3部 感情はどのように生じ、どうやって読み取るのか?
第4部 楽しい日々、幸せな人生を求めて
終わりに とてもゆっくりだが前進し続けるカタツムリのように
エピローグ 心の世界、その深さと広さと高さ

●日本でのアピールポイント

心理学を基に、対人関係でのつまづきやモヤモヤした気持ちを解消するためにアドバイスする本は数多くある。本書もそういった本の一つだと言えるが、感情とは何なのかていねい解き明かすことで読者自身に熟考を促しており、その場限りのノウハウではない、自分自身の感情を受け入れ状況に応じて対処するすべを理解できるようになっている。
また、心理学と言えば専門用語が多く難しい印象があるが、2人の幼い子どもの母親でもある著者が、子どもとの日常のエピソードからヒントを得て人間の本能と心理学を結びつけていく描写など、ほほ笑ましい場面もあり親しみを持てる内容になっている。
著者は、現代人の多くが、自分が感じ取ることよりも他人の感情を読むことにエネルギーを取られ、他人の意思を自分のものと勘違いしがちだと説く。そのうえで「他人の心を読むことは役立つ場合もあるかもしれないが、自分自身の幸せとは関係がない」と言い切る。「自分の感情を一番理解できるのは自分。自分以上に自身の感情を読み取れる人はいない。感情は、本能的に“自分の味方”なのだ」というメッセージは、読者にとって自分の内面と向き合う際の道しるべになるだろう。

(作成;今野由紀)

ソン・ユミ
精神科医。光化門延世FEEL精神健康医学科院長。人間関係でのトラブルに着目した『今まであなたのこと友達だと思ってたのに』(吉川南訳、かんき出版、2021年)を出版し韓国でベストセラーとなる。望ましくない人間関係を整理した後も、自分自身の感情がわからなければ結局また生きる方向を見失ってしまうことに気づき、新たに本書を執筆した。梨花女子大学医学部を卒業後、同付属病院で勤務した。韓国精神分析学会正会員、国際精神分析家。