教保文庫、4月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2024年4月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。世界的に権威のあるブッカー国際賞の最終候補に選ばれて話題を呼んでいるファン・ソギョンの『철도원 삼대(鉄道員三代)』が3位にランクインしました。また、『불편한 편의점(不便なコンビニ)』の作者キム・ホヨンの新作小説『私のドンキホーテ』が刊行され、こちらも注目です。
1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
2位:『젊은작가상 수상작품집(2024第15回若い作家賞受賞作品集)』キム・メラ他著(文学トンネ/2024/3.31)
3位:『철도원 삼대(鉄道員三代)』ファン・ソギョン著(チャンビ/2020.6.5)
韓国現代文学の巨匠ファン・ソギョンの長編小説で2020年6月に刊行されるやベストセラーとなった作品です。植民地時代から現在まで朝鮮半島100年の労働産業者の道のりが鉄道員家族の生の営みを通してリアルに描かれています。このたび英訳版がブッカー国際賞の最終候補にノミネートされ、再び注目を集めています。
4位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
5位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
6位:『홍학의 자리(紅鶴の場所)』チョン・ヘヨン著(エリクシル/2021.7.26)
7位:『아주 희미한 빛으로도(ほんのかすかな光でも)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2023.8.7)
8位:『파과(破果)』ク・ビョンモ著(ウィズダムハウス/2018.4.16)
9位:『원도(ウォンド)』チェ・ジニョン著(ハンギョレ出版社/2024.3.30)
10位:『채식주의자(菜食主義者)』(新装幀)ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)

注目の新刊は以下のとおりです。

『나의 돈키호테(私のドンキホーテ)』キム・ホヨン著(ナムヨプウィジャ/2024.4.25)
韓国でシリーズ累計150万部を記録し、邦訳版も2024年本屋大賞翻訳小説部門の第3位に輝いた『不便なコンビニ』(米津篤八訳/小学館/2023)の作者キム・ホヨンの最新長編小説です。会社を辞めて故郷のテジョンに帰ってきた映像プロデューサーのソルは、中学時代に仲良しグループ「ラマンチャ倶楽部」の皆とアジトのようにして過ごしていたレンタルビデオ屋「ドンキホーテビデオ」が閉店していたことを知ります。自らを韓国のドンキホーテと称していつも子供たちの味方をしてくれた店主のドンおじさんが失踪中だと知ったソルは得意の映像制作を使ってドンおじさんを探し始めます。本作は一店のレンタルビデオ屋を中心に据えて、15年の歳月を行き来しながら若者の夢と冒険、友情を描いた感動の青春小説です。

『율의 시선(ユルの視線)』キム・ミンソ著(チャンビ/2024.4.26)
人と目を合わせられず人付き合いも苦手で他人と深く関わることを避けてきた中学生のアン・ユルはある日、風変りな子イ・ドヘと出会い、自分の殻にひびが入った感覚を覚えます。いきいきとした人物と胸に響く文章、余韻の残る結末が魅力的な美しい作品で第17回チャンビ青少年文学賞を受賞しました。

『쉬프팅(シフティング)』ボム・ユジン著(タサンチェッパン/2024.4.19)
エレベーターで別の世界へ行けるとしたら……。現実を抜け出したいと思っているロアとトユルはある日、都市伝説のような「エレベーターシフティング」でパラレルワールドへ。二人が降り立ったのは学校のない世界。誰もが一度は抱く「違う世界に行けたら幸せになれるだろうか」という問いに寄り添う青少年向けのSFファンタジー小説です。(文/高上由賀)