クォン・ウンジュンの青少年韓国史特講-食べ物で学ぶ韓国の歴史(권은중의 청소년 한국사 특강 -음식으로 배우는 우리 역사)

原題
권은중의 청소년 한국사 특강 -음식으로 배우는 우리 역사
著者
クォン・ウンジュン
出版日
2022年6月25日
発行元
チョルスとヨンヒ
ISBN
9791188215744
ページ数
271ページ
定価
15,000ウォン
分野
人文

●本書の概略

先史時代から李氏朝鮮までの朝鮮半島の歴史を、身近な食べ物を通じて語る。例えば、「唐辛子が大好き過ぎて、唐辛子にコチュジャンをつけて食べる国」とまで言われる韓国で、唐辛子の利用が広まったのは17世紀。豊臣秀吉の朝鮮出兵や清の侵略により疲弊し民衆の貧困化が進んだ時期だ。高価な塩の代わりに、畑で採れる唐辛子の利用が広まったという。さかのぼって13世紀、日本は蒙古襲来を撃退したが、高麗はモンゴルの侵略を受け、同時に遊牧民族の肉食文化を受け入れた。しかし仏教の影響が強かったので大っぴらな肉食はためらわれ、肉の具材を包み隠すようにしてマンドゥ(餃子)が生まれたとか。
この他、米、茶、人参など食べ物を通じて韓国史を読み解いていく。誰もが口にする食べ物という視点は同時に民衆の視点でもある。貧しさの中でも子どもにお腹いっぱい食べさせたい母たちが山菜、野草を工夫して使いナムル料理を生んだ。朝鮮時代は儒教が支配的で厳しい身分制社会だったが、少しでも暮らしを良くしたいと願う民衆の抵抗が歴史を少なからず動かしてきたこともわかる。「10代のための人文学特講シリーズ」の一冊だが、広く一般の読者にも勧めたい。

●目次

第1部 先史時代-豊かな土地、朝鮮半島に集まる人々
1.干潟 2.朝鮮半島の土地と水 3.ヨモギとニンニク 4.汁物
第2部 古代国家の形成-食膳の上に建てられた国
1.米 2.鉄 3.鶏 4.ナムル 5.キムチ
第3部 高麗時代-文化と言えるほど華やかな食膳
1.茶 2.イシモチ 3.青磁 4.マンドゥ 5.ガンギエイ
第4部 朝鮮時代-米の国、理念の国
1.米 2.高麗人参 3.葦 4.唐辛子 5.タンピョンチェ 6.タチウオ 7.市場クッパ

●日本でのアピールポイント

韓国の歴史を知りたくて通史の本を手にしても、見知らぬ人名や用語ばかりでなかなか理解が進まない。ところが本書は「食」にスポットを当てることで、歴史をとらえる視点を私たちの暮らしに近づけてくれる。食を通して見える歴史は人の営みそのもので、すっと腑に落ちる。
高麗、朝鮮の王宮で繰り広げられる熾烈な権力争いの背景もよくわかるので韓流ドラマの時代劇ファンにもお勧めできる。
韓国料理を食べながら、ついしゃべりたくなる話題が本書には満載だ。読み進めるうちに韓国の歴史への理解が深まるとともに、身近な食材への愛おしさが増してくる、そんな得がたい一冊だ。

(作成:村山哲也)

クォン・ウンジュン
1969年生まれ、安東市出身。「ハンギョレ」「文化日報」などで記者として20年余り働いた。記者時代に料理と出会い「食」が人生に大きな位置を占めることに気づき、記者を辞め50歳でイタリア北部ピエモンテの「外国人のためのイタリア料理学校(ICIF)」に留学。料理だけでなくワインについても学び、帰国後はワイン輸入会社を設立。現在はフードライターとして、新聞等に食べ物と歴史をテーマに人文系コラムを執筆し、講演活動も盛んに行っている。著書には『独学パスタ』『10代と通じる料理の人類史』『食の経済史』『ボローニャ、赤い道で人文学と出会う』『パスタでイタリアを味わう』『ワンにはツナマヨ』などがある(いずれも未邦訳)