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K-BOOK振興会便り 2024年5月号 http://k-book.org/
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◆◇今月のTOPIK◇◆
●イベント情報●
5月14日(火):【白水社/オンライン】
『別れを告げない』刊行記念ハン・ガンさんトークイベント
ゲスト:ハン・ガン、瀧井朝世
https://peatix.com/event/3933327
5月14日(火):【チェッコリ/会場+オンライン】
「『パラサイト 半地下の家族』を見る7つの視線」出版記念トークイベント——映画ライター、
翻訳者、編集者の3つの視線 ●第一夜 映画編
ゲスト:月永理絵、廣岡孝弥、アサノタカオ
https://chekccori240514.peatix.com/
5月24日(金):【チェッコリ/会場+オンライン】
『29歳、今日から私が家長です。 』刊行記念―イ・スラ作品を手掛けた2人の翻訳者が語るその魅力
ゲスト:清水知佐子、原田里美
https://chekccori240524.peatix.com/
◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆
小説 『オレアンダー(올리앤더)』
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●シドニー在住の著者による、オーストラリアに越境する韓国人を題材にした小説
韓国からオーストラリアの高校に留学にやってきた勉強熱心なヘソル、彼女のホームステイ先の一人娘で医学部合格を目指す韓国系移民1.5世のクロイ、不法滞在状態の家庭で育った韓国系移民2世のエリー。
本書は、この3人の視点によって物語が進む。
3人は同じ学校に通う韓国系の生徒だが、校内では接点がない。特に、学業優秀な2人と素行不良のエリーの間には大きな溝がある。
互いを理解しがたく感じ、時には反発を覚えつつも、親の都合に振り回されて、「自分の物語」を生きているという実感を持てない彼女たちは次第に本音や秘密を共有し合う関係になっていく。
著者は本書のあとがきで「この本が中高生の推薦図書になってほしい」と語っている。
平易な言葉で書かれていて一つひとつの章が短く、せりふを中心にどんどん展開していくという点でも、この物語は読み手の世代を選ばない。ぜひ若い世代に読んでほしい1冊だ。
https://k-book.org/yomitai/240401/
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芸術・演劇 『俳優と俳優が(배우와 배우가)』
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●俳優キム・シンロクによる25名の俳優とのインタビュー集
演劇の舞台を中心に長いキャリアを持ち、Netflixオリジナルシリーズ「地獄が呼んでいる シーズン1」(2021)、JTBC「財閥家の末息子~Reborn Rich~」(2022)など映像メディアでも知られる、
俳優キム・シンロクが25名の俳優とそれぞれ2回に分けて行ったインタビューが綴られている。
1回目は2019年から2021年にかけて演劇専門ウェブマガジン『演劇in』に連載された「俳優が出会った俳優」である。2回目は1回目から短ければ1年、長ければ3年の時間を置いて行われた。
全世界が翻弄されたパンデミックの時期を経て、演技と世界に対する考えがどう変化したか、時間の経過に伴って変化する「思考」と「言葉」を表現しようという意図だ。
25名は、映画『チャンシルさんには福が多いね』(2021)のカン・マルグムや、映画『82年生まれ、キム・ジヨン』など、演劇以外でも多数の出演作を持つバイプレーヤー、イ・ボンリョンをはじめ、
韓国の演劇街「大学路」の劇場で活動する演劇人、子役俳優など実に多彩だ。活動の場は違っても、現代に生きて躍動する現場の演劇俳優たちと交わしたインタビューには、
演技の理論書、俳優たちの人生哲学が込められている。
https://k-book.org/yomitai/240408/
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エッセイ 『三十の不満 四十の不安―不確かな時間を通過する気持ち
(서른의 불만 마흔의 불안―불확실한 시간을 통과하는 마음)』
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●著者がエディターを務めた雑誌『VOGUE KOREA』での連載エッセイを書籍化した一冊。
自身もワーキングマザーである著者は、幼い頃から一歩下がって従順であることが女性らしさであると教えられてきたという。
現在でも女性は誰かの世話をしてサポートすることがよし、とされる韓国国内のジェンダーバイアスや社会的構造について疑問を呈する。
また、女性の疾患は隠すべきという風潮や性差別発言、女性の痩身志向を助長する社会的風潮、インポスター症候群、夫婦別室、ミレーナ等、著者の実体験や昨今のトレンドをリアルに伝える。
特に著者が30代から40代の現在にかけて経験した不満や不安を通して、女性ならではのストレスやその原因が潜む社会背景を鋭く切り込んでいく。
https://k-book.org/yomitai/240415/
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児童書・絵本『きいろい長ぐつ(노란 장화)』
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●どうして長ぐつは消えたのか。奥の深い絵本。
自慢のきいろい長ぐつを履きたくて、じっと雨の日を待つ主人公。やっと雨が降ったと思ったら、肝心の長ぐつが下駄箱から消えてしまった!
急いで探さないと。植木鉢、おもちゃの汽車、カタツムリの家…きいろくて似たような形のものがすべて長ぐつに見えてしまう。しかし本物は一向に見つからない。
すると突然、大きな恐竜があらわれて…!?
のんびりした物語だと思ったら大間違い。予想外の展開が続き、長ぐつの行方や消えた理由が少しずつ見えてくる。絵本の中にはヒントが散りばめられ、謎解き要素も楽しめる。
https://k-book.org/yomitai/240422/
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◆◇日本語で読める韓国の本◇◆
『たった1日もキミを愛さなかった日はない』( キム・ジェシク /著、藤田麗子/訳、扶桑社)
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かつて愛したすべての人に感謝して、
今そばにいる大切な人に
ありがとうと言えますように…‥。
(「プロローグ」より)
の言葉に集約されているような一冊。“忘れられない愛を忘れるための”117のメッセージが胸に響きます。
この「愛」は男女はもちろん、さまざまなな「愛」にも通じる、そんな気持ちで読みました。誰かに「ありがとう」と言えるための心優しき指南書のようです。
訳者の藤田麗子さんから推薦のメッセージを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/240307/
『どうぶつえん』( スージー・リー /作、姜汶政、松岡礼子/訳、サウザンブックス社)
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不思議な不思議などうぶつえんの物語。パパとママとどうぶつえんに行った女の子。でもパパとママに見えているどうぶつたちと、女の子に見えているどうぶつたちは何だか違います。
パパとママの世界はいつものどうぶつえんなのに、女の子に見えている世界は色鮮やか。そんな不思議な世界がページをめくるたびに現れます。
国際アンデルセン賞を受賞したスージー・リーの絵本デビュー作が待望の日本語翻訳で登場しました。
訳者のお一人、松岡礼子さんから推薦のコメントをいただきました。
https://k-book.org/yomeru/240425/
◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆
教保文庫、3月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
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先月注目の新刊で取り上げたチェ・ジニョンの『오로라(オーロラ)』が6位にランクインしました。
9位の『메리골드 마음 세탁소(マリーゴールド町 心の洗濯屋さん)』は邦訳版が刊行され、ランキング10位以内に日本語でも読める作品が多くなりました。
https://k-book.org/publishing/20240409/
教保文庫、3月の月間ベストと注目の新刊(エッセイ)
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『女神降臨』などのドラマで知られるムン・ガヨン、韓国を代表する大御所ミュージシャン、キム・チャンワンのエッセイがランクインしました。
パンダのプーバオ人気も続いています。
https://k-book.org/publishing/20240406/
◆◇4月のK-BOOKらじお◇◆
♯92 男性の割合が大きい職場でプライドを持って働く女性たちのインタビュー集|ソ・ハナの韓国の本、ウロウロてくてく
https://k-book.org/news/radio_92/
♯93 歴史を知ることで韓国文学をより深く味わえる『韓国文学の中心にあるもの』など|わたし、これ読みました
https://k-book.org/news/radio_93/
♯94 絵本『どうぶつえん』は何としても翻訳出版したい!とクラウドファンディングに乗り出し実現|わたし、これ担当しました
https://k-book.org/news/radio_94/
♯95 他者の痛みに寄り添うことは本当にできるのかを考えさせられる『ロ・ギワンに会った』 -舟喜さとみさん(本屋B&B)|わたし、これ推してます
https://k-book.org/news/radio_95/
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__おしまいに____________________
黄晳暎(ファン・ソギョン)の『鉄道員三代』が、
ブッカー国際賞の最終候補6作品のひとつに選ばれました。
受賞作の発表は5月21日。
2019年に『たそがれ』が1次候補に選ばれながらも受賞を逃した黄氏は、
「今回も同じだと思う」とインタビューで語ったそうですが、朗報を期待したいです。
(運営委員:五十嵐真希)
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発行:一般社団法人 K-BOOK振興会
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