●本書の概要
多くの人が人生の最期は愛する家族や友人に見守られる中、自宅で安らかに死を迎えたいと望むが、現実はマニュアル化された延命治療で苦しみながら、家族に立ち会ってもらうこともできない集中治療室で死を迎えてしまう。
現代医学の進歩や平均寿命の延伸が、かえって死から目を背ける風潮を作ってしまったと話す著者は、30年間医療現場でさまざまな死を目のあたりにしてきた医師の立場から、蘇生措置を施さざるを得ない医療現場の構造的問題や法制度の矛盾、自然な老いさえも治すべき病気とみなし、延命治療にこだわる人々の考え方を指摘し、自ら尊厳を守って人生を締めくくるためには死を学び、準備することが重要だと伝える。
本書では、さまざまな老化現象から、延命治療や緩和ケアなど終末期における具体的な医療行為、延命医療拒否書の書き方、臨終前後の流れや自宅で最期を迎える際にするべきことまで、自分自身や家族の死を前にしてどんな準備が必要なのかをつぶさに解説している。老いと死を受け入れ、自分らしい最期を迎えるための「死の勉強」が全て詰まった一冊。
●目次
プロローグ ある一日のはじまり
1章 死の場面
2章 百歳時代
3章 死のビジネス
4章 良い死、望ましい死
エピローグ 私のエンディングノート
●日本でのアピールポイント
コロナ時代、私たちはまさに死と隣り合わせに生きている。だが、死と向き合い、死を受け入れるということは簡単ではない。ただ、死への漠然としたイメージではなく、人がどのように死んでいくのかについて正しい知識と情報を持つことで、その不安を和らげることは可能だ。
老後の暮らし方や死に対する心の持ち方など、日本にはすでに老後や死をテーマにした書籍が数多くある中、本書は老いや死に至る過程で直面するさまざまな状況や問題を、医師ならではの冷静な視点で指摘し、最期を迎える際の実用的な情報や知識を事細かに提供しており、死を理解する上で大いに役立つだろう。
先の見えない不安が続くいまだからこそ、本書を通じて自分らしい人生の締めくくり方を考えることで、「いまをどう生きたいか」を確かめるきっかけになることも期待できる。
(作成:イ・スジン)