●本書の概略
あてもなくどこかへ向かって歩いている白くまと茶色いくま。2匹はそれぞれの旅路の途中で、他の動物たちと出会ったり、吹雪や嵐の中を歩いたり、石を飛び越えようとしてみて転んだり、氷が溶けてしまって泳いだり・・・と、いろんな出来事を乗り越えてゆく。
「ぼくはちゃんと進んでいるんだろうか?」「あの向こうには何があるんだろう?」と、ときには自分に問いかけながら、自分のスピードでゆっくりと歩き続ける。そうして表紙と裏表紙からそれぞれ歩いてきた2匹のくまは、ついに絵本の真ん中のページで出会う。「こんにちは」「はじめまして」。空には満天の星が広がっている。2匹の歩みはつづいてゆく。
●日本でのアピールポイント
やわらかな色調とかわいらしい絵柄で、飾っておくだけでも癒される作品です。文章が少なく、絵を見るだけでもストーリーを汲み取れるので、日本の読者のみなさんも手に取りやすい作品です。
白くまと茶色いくま、それぞれの物語が表紙と裏表紙から始まり、2匹が出会う真ん中のページは見開きで大きな一枚の絵になるという仕掛けに子どもたちも大喜びしそうです。
静かな色合いの風景の中を自分と向き合いながら歩きつづける2匹の姿は、”生きていると毎日いろんなことがあるけれど自分のスピードで歩いて行けばいいんだよ”と教えてくれるようで、癒されながらも勇気づけられます。
日本では近年、韓国のイラストエッセイが人気ですが、この絵本も疲れたときに手に取ると元気付けられる、エッセイや詩集のような感覚で読める作品です。子どもはもちろん、大人がたのしむ作品としても日本でも多くの読者を手に入れることができる一冊になりそうです。
(作成:松田奈穂子)