すきだからぎゅってしたのに、なんでおこるの?(좋아서 껴안았는데 왜?)

原題
좋아서 껴안았는데 왜?
著者
이현혜(イ・ヒョンヘ)
出版日
2015年11月25日
発行元
チョンゲエ パラン
ISBN
9788997984848
ページ数
40ページ
定価
11,000ウォン
分野
児童書・絵本

●本書の概略

本書では子どもの一日の生活を追いかける形で様々な「境界線」について取り上げ、境界線を守ることや相手を尊重することの大切さを伝えながら、同時に危険な場面に遭遇したときにどうするべきかなどの子どもの安全についても学ぶことができる絵本です。

●あらすじ

ジュンスは同じクラスのジアのことが好きで、ある日ジアをぎゅっとハグします。しかし、それに対してジアは怒ります。「自分の気持ちを表現しただけなのに…」。ジュンスは怒られたことに驚き、どうしたら良いか分からなくなります。その日、ジュンスは先生から「境界線」について教えてもらいます。国や道路のように目に見える境界線もあれば、目には見えない境界線が持ち物や自分自身にもあることを知ったジュンス。そして、その境界線を越えるときはまず相手に尋ね、相手の意見を尊重すること、境界線をむやみに越えれば相手とケンカになったり、時には自分自身が危険にさらされたりするかもしれないことを学びます。ジュンスは、これまでに友達の境界線をむやみに越えてしまったことを思い出しながら、ジアが怒った理由に気づきます。そしてジアに謝るために手紙を書くことにします。

●日本でのアピールポイント

バウンダリー(境界線)について学べる絵本で、韓国の行政機関である女性家庭部の推薦図書です。『いいタッチわるいタッチ だいじょうぶの絵本』(安藤由紀著、復刊ドットコム)や『からだのきもち 境界・同意・尊重ってなに?』(ジェイニーン・サンダース作、サラ・ジェニングス絵、上田勢子訳、子どもの未来社)など、他者との様々な境界線を考え、その先の性犯罪・性暴力対策について取り上げた絵本は日本でもここ数年出版されています。本書も自分と他者の境界線を守ることの大切さや、それをどう守るか、むやみに境界線を越えられたときにどうすべきかが描かれていますが、子どもだけでなく大人が読んでも「自分のあの行動は境界線を越えていたのでは」と省みてハッとさせられます。
「児童性暴力の予防は簡単なことではありません。」裏表紙にある著者のメッセージはこの言葉から始まります。20年以上も性暴力などの暴力被害者を支援し予防教育をしてきた著者は、これまでは大声を上げるなどの「対処」がメインだった性暴力対策を指摘しながら、これからは境界線を守ることを教えることでの「事前予防」が子どもたちに必要だと本書に記しています。
子どもの成長とともに、離れて過ごす時間も増えていきますが、そうしたときの「自分の守り方」や「他人を尊重すること」を子どもにどう教え伝えるか、悩んだときにとても良い一冊だと思います。

(作成:加藤夏美)

イ・ヒョンヘ
家族学・相談心理学・社会福祉学を学び、家族学で博士号を取得。 現在、韓国両性平等教育振興院教授、女性家族部および法務部諮問委員、教育部性被害予防教育執筆委員。 児童・女性・障がい者に関する研究および教材執筆のかたわら、児童および女性の権益保障のための活動を行っている。