●本書の概略
この本のテーマはまさに「大人のための童話」といえる。「私は何をさがしていたのかしら?ちがうわ、何を失ったのかしら?」
オオカミ夫人は今日も忙しく一日をはじめます。家事は何一つできないことはありません。洗い物、掃除、洗濯、一つ片づけたらまた一つ。一つ整理したら次の家事が生じます。そのために、オオカミ夫人にとって家事は戦場と同じことです。部屋と部屋を走り回って家事を片付けているとあっという間に一日が過ぎていきます。以前オオカミ夫人は学校で教師をしていました。狩りも得意で有名でした。…でも、それも昔の話
オオカミ夫人は今日も夢を見ます。自由に森の中を駆け回って猟をすることを。そんな時は戦場のようなこの家を逃げ出したくなります。
こんなことを口にしたら、これ以上「優しい妻」「優しいお母さん」ではいられなくなるから。
でも、でも…時々、本当にたまーに…いえ、いえ、ほとんどいつも
オオカミ夫人は自分に問いかけます。「私はまた夢を見られるのかしら?また、あの広い森のなかで猟をすることができるかしら?」と
自分のことをオオカミ夫人と呼ぶ主人公は、ある時は野の森の中を放浪する狩人だった。でも、結婚と育児によってオオカミ夫人は動物園に閉じ込められた獣のように、家の中に閉じ込められ本来の野生を忘れたように生きていくことになりました。
「私は何を探していたんだったかしら?」「私は何をなくしたんだったかしら?」毎日のように家の中を掃除しながら失った何かを探すオオカミ夫人。彼女が失ったものは何だったのだろうか?彼女は失ったものを探し出して再び森に帰ることができるだろうか?
この本は結婚と育児によってキャリアを失った主人公が自尊心を探し求めるストーリーをオオカミ夫人に例えて描いている。作家はこの物語を描いて自身の本来の姿は何なのかについて繰り返し自問自答したという。この本はキャリアを失った女性たち、ひいては、いろんな状況の中で自尊心を失っている世の中のすべてのオオカミ夫人たちに慰めと勇気を与えられることを期待している。
●日本でのアピールポイント
Me Too運動が広がりをみせる韓国。「82年生まれキム・ジヨン」を記憶している人も多いでしょう。反面、日本はどうなのでしょうか?
オオカミ夫人の抱える日々の悩みは日本の女性たちの多くが抱えている悩みであり、共感を呼ぶと思います。長編小説ではありませんが、繰り返し読むごとにオオカミ夫人のつぶやきが染みわたってきます。
(作成:菊池 静華)