アンニョン・コミュニティ 全2巻(안녕 커뮤니티)

原題
안녕 커뮤니티(全2巻)
著者
タドゥレギ
出版日
2020年9月15日
発行元
チャンビ
ISBN
9788936478186、9788936478193
ページ数
各608ページ
定価
各20,000ウォン
分野
コミック

●本書の概略

2016年から2018年までインターネットに連載されたものに40カットを追加して書籍化。

住民の大多数が老人であるさびれた町、ムンアン洞。そこで写真館を営んでいたパク氏が孤独死し、数日後に発見される。町内にショックが広がる中、責任を感じた大家のバン氏の呼びかけで、顔なじみの住人どうし、毎朝決められた時間に電話をかけて互いの安否を確認する「連絡網」が作られる。

メンバーは、妻を10年前に亡くし一人暮らしのバン氏、バン氏の友達で有償ボランティアと食堂のアルバイトで生計を立てているチョ・ヨンスン&ソル・サンヨン夫婦、バン氏の隣に住む引退した教頭とやはり元教師のキム・キョンオク夫婦、痴呆の母の面倒を見ながらキンパプ屋を営むシン・セボン、自転車屋を営むキム・チュンボク、バン家の嫁でフィリピン人のアンジェラ。電話連絡のほかにも、SNSに互いの写真をアップして生存を知らせるなど、孤独死を防ぐための取り組みが始まる。

事件は、年金暮らしで最も平和にみえた教頭先生宅から起こる。夫の男尊女卑思想に愛想をつかしたキョンオクが別居を宣言し、空き家となった写真館に移り住む。キンパプ屋でバイトを始め、自由な老後を満喫するキョンオクとは対照的に、家事の「か」の字も知らない教頭は、慣れない一人暮らしで右往左往することに。

その間、キンパプ屋では痴呆を患う老母が外を徘徊して迷子になったり、ヨンスンの家では経済的な心配が絶えず、それぞれにしんどい日常が続いていた。

一方、キンパプ屋の向かいで自転車屋を営む生涯独身のチュンボクは、夜道で助けられたのをきっかけにチョン・ブンレに恋心を抱く。ブンレは再開発から取り残された貧民窟に住み、古紙を集めるなどして暮らしていた。ブンレをきっかけに貧民窟の住人たちも連絡網に加えられ、「互いの死を見守るために、互いの生を見守る」つながりができていく。

このように老人たちの生活を中心に描かれる全85のエピソードでは、独居老人の孤独死を皮切りに、家父長制による男女差別、高齢者の貧困、老々介護、国際結婚家庭や性的少数者、家庭内暴力、セクハラ、再開発による住民間の格差と葛藤などが扱われ、まさに今この瞬間の韓国社会を切り取った内容になっている。

●日本でのアピールポイント

韓国は今、世界最速で高齢化が進んでおり、あと5年で超高齢化社会に突入する。福祉制度の整備が追いつかず、庶民の負担が加重している点は日本と変わらない。そんな似たような社会を背景として繰り広げられる『アンニョン・コミュニティ』の世界は、私たちが忘れていた「共同体」のあたたかさを思い出させ、最期まで人間らしく生きるためのヒントを与えてくれる。

タドゥレギ
1982年生まれ。2013年に「タルデンイは10年目」でデビュー。スケールの小さい漫画家を自称し、老人になっても自力で生きて、眠ったまま自然死するのが目標。これまで『タルデンイは10年目』(全2巻)、『鏡よ鏡』(全3巻)、『ちゃらんぽらん病床日記』などの作品を出している。