●本書の概略
いつも同じ人生、いつも変わらない自分、ひどい無気力感を抜け出し、新しい自分へと変化するためには――。
著者は、毎朝3時に起きては思索の時間を持ち、講演活動を続けながら多量の原稿を執筆しているベストセラー作家。たゆまず自己管理を徹底し、年2冊以上の著作をコンスタントに出版。これまで約50冊を世に送り出してきた。
著者は、変化には意志によるものと、それに知性がともなうものがあるという。いつも結果を出す人と、失敗する人の違いは、この「知性が導く意志」にこそあり、自分を変えたければこれを人生に定着させねばならない。本書は“結果を出す人”を20年余り研究した人文学専門家である著者が、彼らに共通する法則を惜しみなくまとめた一冊である。
筆者は、人生を構成する多様な要素から、最も重要といえる5項目に注目し、この5つが変われば、人生はすっかり別のものに変わるという。筆者は自身や偉人のエピソードなども踏まえながら、そのループから抜け出すための法則を説明する。
●目次
プロローグ
始めるには/ 何が人間の人生を以前とは異なるものにするのか
法則1/ 環境を作って利用せよ
法則2/ 人間関係の枠組みを変えよ
法則3/ きのうとは異なる時間の使い方をせよ
法則4/ いつの瞬間も言葉の品格を失うな
法則5/ 限界線を失くせ
持続するには/ ひとりで過ごす時間の力を信じよ
エピローグ
●日本でのアピールポイント
本書の内容は決してセンセーショナルなものや安易なものではない。筆者は「天才でない限り、何かを夢みて叶えるためには、ひとつずつ作っていくしかない」といい、道徳的かつ普遍的法則を並べる。本書において特筆すべきは、変化に至るまでの思考過程や実践方法が細かく述懐されている点だ。こうした点は世界的ベストセラー『7つの習慣(スティーブン・R.コヴィー)』と類似しているであろう。意志だけに頼ったやみくもな努力を歓迎せず、やりたいことをルーティンの中に落とし込む点は、今年2月に出版され話題を呼んだ『がんばらない戦略(アスコム、川下和彦・たむらようこ、2021)』と相通じる。ひとりで過ごす時間を重要視する点は、齋藤孝の『孤独のチカラ(PARCO出版、2005)』と通底するだろう。こうした多くの日本人にとって受け入れやすい要素を、より体系的かつ濃密にまとめたのが本書である。
コロナ時代、目まぐるしく変容する社会の中で自身の価値観を見つめ直し、普遍的なものの価値を再認識した人は日本でも多かったはず。私たちは、どう人生の声に耳を傾けるべきなのか。新しい時代における自らの行動指針となりえる一冊だ。
筆者は、本書をこんな言葉で締めくくる。
『生きていく環境や人生そのものを変えるため、最も大切に実践すべきことは自身を振り返り、立ち止まるときは立ち止まって、人生があなたに聞かせる声に耳を傾けることである。時は決してとどまることなく機械的に流れゆくが、私たちは自身のためにそれを活用できるのだ。その素晴らしき贈り物を逃してはいけない。
私の一日は依然として熱く
私の日常は絶えず熾烈だ
私は私を変えられる(p322)』
(作成:音野阿梨沙)