五百年目の十五歳(오백 년째 열다섯)/五百年目の十五歳2 狐玉の重み(오백 년째 열다섯2 구술의 무게)

原題
①『오백 년째 열다섯』/②『오백 년째 열다섯2 구술의 무게』
著者
キム・ヘジョン
出版日
①2022年1月28日/②2023年2月28日
発行元
①②ウィズダムハウス
ISBN
①9791168121065/②9791168125803
ページ数
①220頁/②228頁
定価
①12,500ウォン/②13,500ウォン
分野
YA小説

●本書の概略

古朝鮮の建国神話と昔話に由来する野狐(ヤホ)族と虎(ホラン)族。人間界にまぎれ生きてきた彼らの物語。主人公は虎族と人間の間に生まれた少女。

①スソク中学二年二組に転校してきた三つ子のボム、ヨルム、カウル。三人の本当の姿は、祖母と母、十五歳の娘だ。
野狐には、狐から人間に姿を変えた本野狐と、本野狐から狐玉をもらい人間から野狐になった従野狐がいる。狐玉を持つ者の肉体は時間が止まり、狐玉がある限り永遠を生きる。ボム、ヨルム、カウルは五百年生きてきた従野狐だ。
朝鮮時代、カウルは罠にかかった狐を助ける。それは特別な狐玉を持つ本野狐のリョン。五百年前にカウルたちが命を落としそうになったとき、リョンは狐玉を与えて命を救い、恩を返したのだった。
ある日帰宅したカウルは、リョンが死んだということをニュースで知る。絶望するカウルはその死を通して、自分に与えられたのが特別な狐玉だと知る。五百年に一度の狐玉をめぐる戦いが始まろうとしている今、虎族が特別な狐玉を狙っている。カウルは逃げるのではなく、自分が戦いを永遠に終わらせるのだと立ち上がる。周囲の協力を得たカウルは、今後戦いを起こすことができないよう野狐族と虎族へ命じ、戦いは永遠の収束を迎える。

②進級したカウルは、特別な狐玉を持つ者として、本野狐と本虎を集めた会を提案していた。入念な準備をして集会に臨んだカウル。そこで虎族の首頭である自身の祖母ボムニョに初めて会うのだった。集会で野狐族と虎族が野狐虎(ヤホラン)として協力し生きていくことを提案したカウルは、野狐虎のリーダーとなる。
リーダーとなったカウルのもとへ、シルバー製薬という会社にある、虎族研究をしているプロジェクトの存在が伝えられる。そこへ虎族の情報を流している者がいるというのだ。シルバー製薬代表の秘書に変身し潜入捜査を始めたカウル。犯人として浮上したのは祖母ボムニョだった。野狐虎と人間すべてを守るため、プロジェクトに関わった人間の記憶を消すという方法を選択し、カウルは難事を切り抜ける。

●目次

①『五百年目の十五歳』
1部 怪しい三つ子
2部 揺れる心
3部 半分だけ
4部 狐玉をめぐる戦い

②『五百年目の十五歳2 狐玉の重み』
1部 新しい始まり
2部 野狐虎の誕生
3部 人間を愛した野狐虎
4部 最後の反撃

●日本でのアピールポイント

斬新な世界観が魅力的なKファンタジー。韓国の神話や昔話といえば、ペ・ヨンジュン主演『太王四神記』(2007)、トッケビ主演俳優のイ・ドンウク主演『九尾狐伝』(2021)など、日本で放送され話題となったドラマでも取り上げられている題材だ。本作中に解説もあり、ドラマとはまた違う視点から韓国の神話や昔話を知ることができるという点でも興味深い。YA小説ということもあり読みやすく、一気に読破してしまう。

五百年という長い年月を生きてきた少女が、友人や家族と過ごす時間、恋や社会生活という初めての経験などを通して、一番大切なことは何なのかという問いの答えを導いていく成長物語には、ヒューマンドラマ要素もある。永遠を生きるということは祝福か呪いか、時間に追われ今を忙しく生きる大人にも響く作品。
韓国において10万部記念として、2023年7月28日に教保文庫オリジナルリカバー版が出版された。

(作成:半澤結莉奈)

キム・ヘジョン
1983年生まれ。中学二年のとき『家出少女』で小説家デビュー。日本では『ファンタスティックガール』(作/キム・ヘジョン、訳/清水知佐子、小学館、2002年)が出版されており、韓国でドラマ化、Netflixで2021年日本版同時配信された『こんにちは?私だよ!』の原作。ガールズ作品に定評があり、韓国のZ世代に愛される。