六夜の哀悼(여섯 밤의 애도)

原題
여섯 밤의 애도
著者
コ・ソンギュ
出版日
2021年11月20日
発行元
ハンギョレ出版
ISBN
9791160406801
ページ数
297ページ
定価
17,000ウォン
分野
人文

●本書の概略

本書は、韓国語で「哀悼相談」と訳されることが多い「グリーフカウンセリング」の専門家が、自死遺族のグループ活動をアレンジし、参加者たちの「心の癒やし」の過程を記録したものだ。

自殺で肉親を亡くした20~30代の女性5人が、自助グループ「マインドピクニック」に参加し、六夜に渡って思いを語り合った。初めて経験した「あの日」の衝撃、以前の日常に戻れない苦しみ、変わってしまった家族や周りの人々との関係、今後生きていく意欲をどう取り戻したらいいのか――。

彼女たちは対話に対話を重ね、少しずつ故人と正面から向き合い、周囲との関係を再構築し、自分なりの新たな生き方を見出していく。
臨床心理学の専門家である著者は、この「哀悼の道のり」を参加者とともに歩み、彼女たちの対話を記録した。思いがけず身近な人を失い苦悩に打ちひしがれている人々が、心から「哀悼」の時を持てるように…。そうした人を支え見守ろうとする人々が、心に届く労いと共感を伝えられるように…。
そんな願いを込め、専門的視点を交えつつ、対話を通じた「哀悼」の大切さを訴えている。

●目次

プロローグ
1章 みんな初めてだった ~最初の哀悼の夜
2章 「私たちはお互いを見ている」と気付く哀悼の瞬間 ~2回目の哀悼の夜
3章 あの人の名をもう少し楽な気持ちで呼んでみる ~3回目の哀悼の夜
4章 これからの人生へ意欲を出す勇気 ~4回目の哀悼の夜
5章 あの人の幸せ、苦悩、情熱をまるごと記憶する ~5回目の哀悼の夜
6章 私の人生とあの人との健全なつながり ~6回目の哀悼の夜
エピローグ

●日本でのアピールポイント

相次ぐ震災など多くの人々が亡くなる災害・事故の経験を受け、日本では20年ほど前からグリーフケアやグリーフカウンセリングへの理解が広がり、関連の書籍も数多く出版されてきた。韓国でもセウォル号事故などの惨事を背景に同様の動きがある。
かつて地域共同体の支え合いで営まれた慰霊・追悼は、近代化とともに企業も関与する個別的なものに変わり、近年はコロナの影響もあり家族葬が広がるなど、悲しみを共有する場がますます分断されがちになっている。中でも、自殺により思いがけず愛する人を失った人の苦悩は、十分に受け止められ癒やされているとは言いがたい。
世界でも自殺率が高いとされる韓国で、著者は悲しみを共有できる機会が少ない若い世代に注目し、語り合いの場を持った。大きな意味がある試みだ。国境を越えた共感を呼ぶにとどまらず、愛する人を亡くした当事者、それを支えようとする人々の双方に有益な一冊となるはずだ。

(作成:金子博昭)

著者:コ・ソンギュ
臨床心理学者。専門家グループ「マインドワークス」心理相談代表であり、自殺により身近な人を失った人々を心の面から支える団体「マリーゴールド」を運営。グリーフカウンセリングを通じ、当事者が十分に悲しむことができるよう支援している。前著に『私たちは皆自殺死別者です』(2020、未邦訳)。