●本書の概略
物語は主人公のミスクの姉が多発性骨髄腫になり、病状が悪化していくところから始まる。
幼少期。ミスクの家は売れない詩人の父と、それを内職や食堂の仕事で支える母、距離感のある姉とミスクの4人家族だ。父は経済力がなく夫婦げんかが絶えない。父が投げた本で、ミスクは顔に傷を負ってしまう。
家に居場所のないミスクの心の拠り所となるのがジェイという少女だ。しかし、その平穏な日々も、ジェイが学校で暴力沙汰を起こし学校に来なくなったことで終わってしまう。
やがて高校に入ったミスクはジェイと再会を果たす。父の家庭内暴力は激しさを増すばかり。ジェイは「母親とは血が繋がっていない」と話し、家庭に問題を抱えている様子。二人は親しくなり、いつか家を出て二人で住もうと約束する。一緒に旅行にも行き、ミスクはジェイにすっかり心を許していた。
ある日、ジェイがミスクの家の家庭内暴力を題材に小説を書き、賞を取ったことが明らかになる。小説のために自分と仲良くしていたのだと知り、ミスクはひどく傷つく。ミスクはキョンジェと言う男の子と出会い、付き合うようになる。そして、アルバイトをして貯めた金でミスクは家を出る。その後、父の病の知らせを受けて病院に行くと、ガンだということがわかる。父の看病をする母は、甲斐甲斐しく看病することが復讐なのだと話す。3年後に父は亡くなり、母は張り合いをなくしたようにテレビばかり見て暮らす。
その後、姉も病気を発症して亡くなった。ミスクは実家に戻るが、そこも立ち退きになる。そのお金でミスクの顔の傷を治しなさいと母は言った。
●目次
プロローグ/1部/2部/3部/あとがき
●日本でのアピールポイント
息苦しい家庭環境に生まれた、1人の少女の幼少期から20代までを描いている。「家族とはなにか」を考えさせられる内容でもあり、成長するにしたがって息苦しい家庭環境から徐々に自由になっていく様子に少女の成長も感じられる作品だ。
日本のマンガは娯楽の要素が強く、ドキドキする冒険のような展開や楽しみながら読める内容が多いが、本作は対照的にシリアスな小説を読んだ後のような余韻を味わえる。この独特の余韻に新鮮さを感じる日本の読者は多いのではないだろうか。