●本書の概略
著者がエディターを務めた雑誌『VOGUE KOREA』(ヴォーグコリア)での連載を書籍化した一冊。過去から現在にかけての女性史をひも解きながら、現代女性が置かれる境遇や抱える問題を幅広いジャンルから取り上げていく。特に著者が30代から40代の現在にかけて経験した不満や不安を通して、女性ならではのストレスやその原因が潜む社会背景を鋭く切り込んでいく。
●あらすじ
自身もワーキングマザーである著者は、幼い頃から一歩下がって従順であることが女性らしさであると教えられてきたという。現在でも女性は誰かの世話をしてサポートすることがよし、とされる韓国国内のジェンダーバイアスや社会的構造について疑問を呈する。また、女性の疾患は隠すべきという風潮や性差別発言、女性の痩身志向を助長する社会的風潮、インポスター症候群、夫婦別室、ミレーナ等、著者の実体験や昨今のトレンドをリアルに伝える。
●目次
プロローグ
一部 三十の不満
二部 四十の不安
●日本でのアピールポイント
女性を取り巻く環境はこの数十年間で大きく変わったと言われるが、果たしてそうだろうか? 本書はそんな疑問を投げかけると同時に、古今東西のフェミニズムに関するニュース、著名人の言葉を例に挙げて答えている。
著者が語る現代女性の境遇をひも解いていくと、今や韓国で聞かない日はないぐらい深刻な問題である、少子化の根本的な原因や実態が浮き彫りになってくるようだ。
日本でも同じ問題が話題になる昨今、本書は日本社会でも共感を得る一冊になるだろう。特に昭和世代で育った人ならば、誰もが経験してきたのではないだろうか。本書がタイトル通りの不満や不安だけで終わらないのは、19年間フィーチャーエディター(特集記事の担当デスク)として活躍した著者ならではの視点で、事実を俯瞰して丁寧に書きだしているからだ。
守りたいものは諦めない。抱えきれない不安や孤独も誰かと共有できたら、きっと前に進む原動力になる。読み終えた後に、そんな著者の想いを感じられた。日韓両国の女性たちの声を代弁してくれること必至の一冊だ。
(作成 朴純実)