俳優と俳優が(배우와 배우가)

原題
배우와 배우가
著者
キム・シンロク
出版日
2023年1月25日
発行元
アノンブックス
ISBN
9791192638065
ページ数
328ページ
定価
20,000ウォン
分野
芸術・演劇

●本書の概略

本書には演劇の舞台を中心に長いキャリアを持ち、Netflixオリジナルシリーズ「地獄が呼んでいる シーズン1」(2021)、JTBC「財閥家の末息子~Reborn Rich~」(2022)など映像メディアでも知られる、俳優キム・シンロクが25名の俳優との間で2回に分けて交わされた対話が綴られている。1回目は2019年から2021年にかけて演劇専門ウェブマガジン『演劇in』に連載された「俳優が出会った俳優」である。2回目は1回目から短ければ1年、長ければ3年の時間を置いて行われた。全世界が翻弄されたパンデミックの時期を経て、演技と世界に対する考えがどう変化したか、時間の経過に伴って変化する「思考」と「言葉」を表現しようという意図だ。
25名は、映画『チャンシルさんには福が多いね』(2021)のカン・マルグムや、映画『82年生まれ、キム・ジヨン』など、演劇以外でも多数の出演作を持つバイプレーヤー、イ・ボンリョンをはじめ、韓国の演劇街「大学路」の劇場で活動する演劇人、子役俳優など実に多彩だ。活動の場は違っても、現代に生きて躍動する現場の演劇俳優たちと交わした対話は、演技の理論書であり、俳優たちの人生哲学でもある。

●目次

プロローグ 二回のストーリー
1.ファン・ヘラン 俳優という空の器/限りなく分かれる可能性の世界
2.ヤン・ジョンウク 新たな身体-文化のための停車場、Sats/いったい我々は劇場で何をしているのか?
3.キム・ソクジュ 主体と世界の転覆「出来上がっていく身体」/これをやって見たい
4.キム・ソギョン 自分だけのドラマを求めて、プラスティック・リバー/台無しになった話、心の曲芸師
5.キム・ウナン 根まで噛んで食べる食事療法/金魚鉢を被って宇宙に旅立つ人
6.イ・リ 社会との接点を通じて得た「多重現存」/私の夢は当事者の強さを超えること
7.アン・ジェヒョン 日常の中に立てられて、倒れるヘテロトピア/一つの動作を千回やった人の心構え
8.砂漠の星のオーロラ(ファン・ウヌ、キム・ジョン) 私と人物の「固有感覚」が出会う時/私という生命はとても尊い
9.ペ・ソンヒ 奇妙でぎこちないイメージ、インサート/弱さと勇気
10.イ・ジャラム 慣れては壊し新たに作る「かたち」/時間が全くないよぉぉぉ
11.チェ・ヒジン 辿り着くべきユートピアは無いから、自由に/迷惑なおばあさんになりたくない
12.キム・ジニョン 孤立の時代、繋がる経験、音の同調/動いてこそバランスが取れるのでは
13.チョ・ヨニ 躍動的なディスタンス/現世は俳優として生きることに
14.カン・マルグム 自分だけの秘密、自分だけの花、自分だけの固有名詞/西の森の国の王女
15.イ・ジョンム 自分に対する誠実な発見から/演劇は面白く
16.ファン・スンミ 私が自分を驚かせる/出会った
17.イ・ヒョンフン 正確に、しかし生き生きと/人生の思考
18.カン・ボラム 私がする/経路からの離脱
19.イ・ボンリョン そこにいる/演技がもっと私の「こと」だったらいい
20.カン・ミョンジュ 楽譜が先、解説はそのあとに来る/とても幸せな気分を感じて
21.子役俳優4名 みんなで大縄飛びをしよう/元気でやってます、とても元気です
エピローグ 次のストーリー

●日本でのアピールポイント

韓国ドラマを見ていると、主演級の俳優はもちろん、脇を固める俳優たちの演技の巧みさと層の厚さにいつも驚かされる。印象に残った俳優たちのプロフィールを調べると、演劇の舞台で相当長い経験を積んでいるケースが多い。本書の著者キム・シンロクもその一人だ。著者がプロローグで「創作としての演技」「創作者としての俳優」に注目し、「個々の俳優たちが演技について考えていることをお見せしたい」と述べているように、本書に登場する俳優たちの語る言葉は実に豊かで、思索に富んでいる。
本書は、著者自身がここ数年、ドラマ界で注目され始める中で抱いた「俳優に演技のことを聞かずに、私的な質問ばかりするのはなぜか」という疑問に対する彼女なりの反論であり、答えでもある。
近年、隣国への最も身近な「入り口」である韓国ドラマや映画について、エンタテインメント性にとどまらず、作品、脚本、演出、演技など、創作の各分野や背景となる社会や文化に着目したアプローチが数多くおこなわれている。本書は韓国カルチャーを「演技」という切口でより深く知るための絶好の素材であり、韓国演劇界の「現在」を知る格好の一冊といえよう。

(作成:中村晶子)

キム・シンロク
1981年全羅南道光州広域市生まれ。ソウル大学卒業。漢陽大学大学院(演劇映画学)修士。韓国芸術中央学校演劇院(演技科・芸術専門士) 2004年、演劇「サバイバル・カレンダー」で舞台デビュー、その後、演劇を中心に活動。2020年にtvNドラマ「謗法(ほうぼう)〜運命を変える方法〜」、2021年にJTBCドラマ「怪物」Netflixオリジナル「地獄が呼んでいる シーズン1」で注目を集め、ドラマ界に本格進出。2022年JTBCドラマ「財閥家の末息子~Reborn Rich~」では、財閥創業者の一人娘を演じ、卓越した演技力で視聴者に強烈な印象を与えた。2024年には「地獄が呼んでいる シーズン2」の配信も控えている。俳優として舞台、ドラマ、映画などで活動すると同時に、後進に演技理論を教える指導者でもある。