貧しい子どもたちはどうやって大人になるのか 貧困と青少年、十年の記録 (가난한 아이들은 어떻게 어른이 되는가 빈곤과 청소년,10년의 기록)

原題
가난한 아이들은 어떻게 어른이 되는가 비곤과 청소년,10년의 기록
著者
カン・ジナ
出版日
2023年11月6日
発行元
トルペゲ
ISBN
9791192836355
ページ数
277P
定価
17,500ウォン
分野
人文

●本書の概略

子どもの貧困が社会問題として認識されて久しい。貧困家庭で育った若者はどのように大人になり、自分の人生を歩むのか。そこにはどんな困難が待ち受けているのか。
著者は25年間の教師生活の中で、親からの虐待や貧困などの事情で学校生活になじめず、進学や就職をあきらめ、社会からのけ者にされる若者を数多く見てきた。そうした経験の中から若者の支援政策に関心を持ち大学院で博士論文を執筆する中で、貧困家庭で育った若者たちにインタビューしてきた。
本書は貧困家庭で育った8人の若者を10年間インタビューしながら、貧困家庭の若者が大学や就職など自立後の困難について考察した。その結果、若者の貧困には、家庭や個人だけの問題にとどまらず、教育や労働、福祉など若者を取り巻く課題が浮かび上がる。

●目次

13p 「未来を考えると本当に暗いです」
憂うつに耐える人生、ソヒ
ソヒの後日談
貧しい家族はなぜ憂うつなのか?

41p 「良い父親になりたい」
真面目で誠実な青年、ヨンソン
ヨンソンの後日談
家族に対するやるせなさはどこから来るのか?

67p 「自分の経験を活かせるのが僕の長所です」
スーパーポジティブのエネルギー、ジヒョン
ジヒョンの後日談
貧困を克服する力はどこから生まれるのか?

101p 「これからどうすれば幸せに暮らせるでしょうか」
憂うつな青年の影、ヨヌ
ヨヌの後日談
自分にふさわしい道はどうすれば見つけられるのか?

129p 「ここから押し出されたら終わりです」
貧困の沼、スジョン
スジョンの後日談
就職後もなぜ貧困の連鎖は終わらないのか?

161p 「オートバイに乗れば、息苦しさも晴れるんです」
言葉通り疾風怒とう、ヒョンソク
ヒョンソク
罪を犯した青年は誰なのか?

193p 「金がないから不安です」
未来の事業家、ウビン
働く青少年はどんな人生を夢見ているのか?

225p 「人の視線が嫌いです」
目立つが、視線が怖い、ヘジュ
ヘジュの後日談
学校の外の世界の視線がなぜ怖いのか?

●日本でのアピールポイント

近年、子どもや若者の抱えている生活の困難さや, 問題の実態が「貧困」として明らかにされることが 増えてきている。日本だけでなく、韓国も若者の貧困が深刻な社会問題となっている。一般的に、多くの人は、貧困家庭で育った若者が大学進学や就職を果たせば、貧困から抜け出し、幸せな生活を送れると考えがちだ。しかし、若者が貧困から抜け出すのは容易ではない。そして貧困といっても、家庭環境によってその状況はさまざまだ。長期間にわたるインタビューで若者の成長に及ぼす貧困の影響が具体的に浮かび上がる。家庭環境や学校教育での支援の不十分さ、学歴社会の韓国で大学に進学できず、就職しても非正規や低賃金の仕事しか就けないなど「人並みの暮らし」は難しい。さらに就職後も家長として家族を支えなければならず、経済的に自立できないなど貧困が及ぼす影響を多角的に指摘する。日本でも若者の貧困問題が深刻化しているが、貧困の若者が自立した後のについて論じた著書は少ない。韓国と日本では若者の福祉制度の違いなどはあるが、登場する8人の事例は、日本でも参考になる部分が多いはずだ。

(作成:砂上麻子)

カン・ジナ
高校で英語教師として勤務するかたわら、青少年政策を研究。教師として働くうちに、貧困家庭で育った生徒たちの成長に関心を持ち社会福祉を学ぶ。共訳に「制度的な文化技術誌」がある。