●本書の概略
5歳で突然母親を亡くしたミン・シウ少年は母親との別れを実感できなかった。妻の闘病とシウ少年の成長を考えて、大自然のある済州島で暮らすことを決めた映画監督のミン・ビョンフン氏。妻と息子との日々を映像に撮りためていた。その後母親を亡くした息子との暮らしも映像に収めドキュメンタリー「約束」という映画を制作、韓国で公開されている。
「いつかきっと天国で会おう」という母親との約束は永遠にかなわないように感じられ、母親のいない海がむしろ母親を感じさせる。波のように押し寄せて語りかける母、星空の母さん星、悲しく感じられる雨水さえも母親の姿としてとらえられ表現されている。
大人たちはシウ少年がはやく母親を忘れることを願ったが、シウ少年にとっては母親が忘れられることがもっとも怖いことだった。シウ少年が書いた文章は、詩、日記、手紙と形式は様々だが、シウ少年は最初から最後まで母親に関する恋しさを一貫して描いている。
ミン・シウ少年の童詩集「約束」は母親を失った9歳(発刊当時)の少年の母を思う気持ちを集めた本である。母親は波になってふいに少年に近づき、ささやきかけてはまた去っていく。少年は詩を書くことで母親を失った隙間を「母を恋しく思う気持ち」で表現し埋めていった。母親が去った済州島の海は 今は母親に対する恋しさで埋め尽くされている。
●目次
巻頭言
1部 シウの童詩
2部 シウの日記
3部 シウの手紙
●日本でのアピールポイント
韓国tvNの人気プログラム<유 퀴즈 온 더 블록>(YOU QUIZ ON THE BLOCK)に2023年8月出演したことで韓国でも広く知られ注目されたミン・シウ少年と詩集「約束」。家族を失うという痛み、苦しみは、病気や災害などいろんな場面でおこるが、幼くして親を失う痛みはそのなかでも特段の痛み、苦しみではないだろうか。
韓国の読者レビューでは、「悲しみに打ち勝とうとするのではなく傍におくことで意味を持つ」「童詩集を読んでこんなに涙するなんて。一冊の悲しい小説を読んだ感じ」と高評価を得ている。
シウ少年の詩を読んで涙し、いつかドキュメンタリー映画「約束」を見たいと思う。シウ少年とミン・ビョンフン監督の素朴な人柄や家族を思う気持ちに接してほしい。
<유 퀴즈 온 더 블록>(YOU QUIZ ON THE BLOCK)出演時のハイライト映像は下記からご覧いただけます。
⇒ https://www.youtube.com/watch?v=z-OMmBUeRGk
(作成:菊池静華)