●本書の概略
毎日をしぶとく生きてきた80歳前後のおばあさんたちが、遅まきながら文字と絵を学んだことで紡いだ、感動と涙の人生日記。
女だから、あるいは生活の貧しさから文字を学ぶ機会を失ったおばあさんたち。生きていくだけで精一杯で、夢があっても夢見ることすらできなかったひとたちが、おばあさんになってようやく自分だけのための時間を作り、文字を学び始めた。
自分の名前と住所を書けるだけでも、この上ない幸せだったが、もう一度勇気を振り絞り、今度は絵を学んだ。線を引き、丸や四角から描き始め、今までの人生や周りの人々、風景などを何十枚も、何百枚もの絵と文字で語った。
順天(スンチョン)に住む20名のおばあさんたちが聞かせてくれる、胸が詰まるような感動の人生ストーリーを丁寧にまとめ上げた一冊だ。
●目次
一番目の話 私の名前はアン・アンシンです
二番目の話 私の名前はソン・キョンエです
三番目の話 90歳目前に小学生になりました
四番目の話 今思えば母がとてもわかいそうで申し訳ないです
五番目の話 足の親指がかっこいいから結婚しました
六番目の話 夫と子供達のことで心休まる日はありませんでした
七番目の話 学校へ行く日が一番幸せです
順天のおばあさんたちの自画像
先生からの手紙
●日本でのアピールポイント
SNSに掲載されたおばあさんたちの絵が瞬く間に人気を集め、韓国内のみならず、アメリカ・イタリア・フランスでも展示会を開いたり、ミュージカルとして上演されたりと大きな話題を呼んだ。その後、絵や作文を追加して、本として出版されたのが今回の書籍となる。
教育を受ける権利、文字の読み書きができる能力が、あの時代の多くの女性達には夢の夢であった。娘として、母として、嫁として、常に犠牲を強いられながら、それでも強く淡々と生きて来られた姿は悲しくて美しいほどだ。
高齢の有名学者が語る名言も良いけど、自分達の母や近所のおばあさんのような、より身近な存在が聞かせてくれる人生の物語には、言葉では表せない響きがある。
年齢や環境のせいにしたくなった時、なかなかやる気の出ない時、自分には才能なんてないと落ち込んだ時、兄弟と比較されて寂かった思いから未だに抜け出せない時などなど、ぜひこの本を手に取ってほしい。読み返す度に「今が人生で一番幸せ!」と口を揃えるおばあさんたちのように、今を生きていけるエネルギーをもらえるはずだ。
(作成:孫 鎬廷)