完璧なタイミング(완벽한 타이밍)

原題
완벽한 타이밍
著者
ナム・ドンワン
出版日
2021年3月2日
発行元
キンダーランド
ISBN
9788956189628
ページ数
40
定価
14,000ウォン
分野
絵本

●本書の概略

舞台は遠足に向かうバスの中。朝にさつまいもを食べた主人公は、おなかの調子が悪くなる。数日前の体育の時間、クラスメイトが大きな音のおならをしてみんなの笑いものになったことを思い出し、おならを我慢しようとする。我慢するあまりおなかが風船みたいにぱんぱんに膨らんでしまったらどうしよう、おならの威力で宇宙まで飛んで行ってしまわないかな、と想像力を膨らませる。ゾウを驚かせて大きな声が出た瞬間におならをしたらどうだろう、キリンの首によじ登って高い所でしたら気付かれないかも、とクラスメイトにばれずにおならをする方法を考える主人公。いよいよ我慢ができなくなってきたころ、牧場が目の前に現れ、飛行機が飛んでいる姿が見える。さらには道路の前方に石があることに気付く。牛糞の匂いが漂う牧場の横を通り、飛行機が音を立てバスの真上を飛び、バスが石を踏んで揺れる瞬間におならを出そうと試みる。まさにタイトルの通り、こっそりおながらできる「完璧なタイミング」を狙う。そして完璧なタイミングがやってきたその時、バスに乗っているみんなが一斉におならをする。バスからは笑い声が漏れ、主人公は完璧な遠足になりそうだと語る。最後のページには楽しそうな集合写真が登場する。

●日本でのアピールポイント

韓国での対象年齢は3歳以上。『おならうた』(谷川俊太郎・原詩、飯野和好・絵、絵本館)と同じく、子どもたちが大好きなおならを題材にしている。さつまいもを食べるとおならが出る、でもおならを友達に気付かれたくない、と日本の子どもにも理解しやすい展開だ。涙や鼻水を流しながら必死におならを我慢する主人公のコミカルな表情からは、絵本を読む子どもたちがげらげらと笑う姿が想像できる。
絵はカラフルで、「完璧なタイミング」以前は黄色、以後は水色が背景に使われており対比が分かりやすい。バスに乗っている子どもたち一人一人の表情や服装、主人公の想像の世界に登場する宇宙や怪獣の様子は、よく見るとそれぞれ細かな描写がされている。「このお友達はメガネをかけて本を読んでいるね」「この宇宙人の歯はワニみたいだね。湯気が出ているマグカップを持っているけど、カップの中身は何だろう」など、絵を見ながら大人が問いかければ、子どもは想像力を働かせて答えてくれるだろう。親子の会話や子どもの想像力を鍛えるきっかけをくれる一冊だ。
クラスメイトたちも一斉におならをするという結末には、大人も予想を裏切られる。大人も驚く展開があるという点では、『パンどろぼう』(柴田ケイコ作、KADOKAWA)を連想させる。

(作成:西田朝子)

ナム・ドンワン
二児の父。慶熙大学でデザインを専攻。文具デザインの会社に勤務したのち絵本作家になる。挿絵のみを担当した児童書も多数出版。本作が文と絵の両方を手がけた初めての絵本で、以降2022年に『ちぇっ!モグラにだれもきょうみがない』、『スプーンでじゅうぶん』を発表。いずれも未邦訳。