●本書の概略
本書は「フォックスコーナー青少年小説」シリーズの第一弾として出版された。
主人公の少女「ギョン」はクリスマス生まれ。若い頃は期待の映画監督だったが今ではほぼ無職の父、床屋を営む母、軍隊服務中の兄、成績優秀な姉、元校長の祖父の5人家族。中学2年のクリスマスに、両親の離婚宣言と親友「ヘジ」の絶交宣言を同時に受ける。両親は別居し、姉は学校を辞め、祖父は高齢者施設に入所し家族がばらばらになる。中学3年生になると、ヘジはある女子グループに入りギョンを無視するが、ヘジがグループ内で嫌がらせを受けるようになり心を痛める。一方で、親しくなった男子生徒には打ち明けた将来の夢を周囲に言いふらされ、ショックを受ける。
家庭と学校で問題を抱えたギョンに、学校のカウンセラーは悩みをリスト化しながら、深刻な問題から優先順位を決めて一つずつ解決し、気になることは相手に直接尋ねるよう助言する。学校で嫌がらせをしてくる奴らに復讐すること、家族を集めてパーティーを開くこと、ヘジと仲直りすることの3つをクリスマスの目標に決め、一つずつ実現させるため奔走する。まずは身を挺してヘジをいじめっ子から助け出し、仲直りする。次に携帯電話の録音機能を使っていじめっ子の暴言をばらし、男子生徒には吐瀉物と辛らつな台詞をぶつけ復讐を果たす。最後に家族全員をクリスマスパーティーに集めることに成功する。パーティーをきっかけに両親は仲直りをし、兄姉や祖父との関係も改善する。そして勉強のコツも掴んだギョンは、以前より全てのことが大切に感じられるようになったと語る。
●目次
とてもださいクリスマス
冬休みに起きたこと
反省しません
ぼっちなの?問題児なの?
悪いXの公式
人生が美しい?
良い知らせ、悪い知らせ
クラブの規則、ぼっちの法則
あなた達、みんなむかつく
一度に一つずつ
残飯処理班
D-day 1か月前
D-day 25日前
D-day 20日前
D-day クリスマス
D-day 私の誕生日
毎日クリスマス
作家の言葉
●日本でのアピールポイント
主人公が抱える悩みは家族の不仲、友人関係、気になる異性、成績など日本の青少年にも共通する。本作品の特徴は、思春期の学生が対峙しうる悩みのほぼ全てが、同時に主人公に降りかかることだ。この非常事態を、先生の助言をヒントに主人公自らが問題に向き合い、一つずつ乗り越えていく姿は爽快だ。作中に何度も登場する「問題解決の秘訣」は、気になることは相手に直接尋ねる、問題を一つずつ解決するという単純なものだ。人生は思うより複雑ではないと、私たち大人にも気付かせてくれる。
(作成:西田朝子)