教保文庫、4月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2023年4月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。チョン・ミョングァンの『鯨』が、国際ブッカー賞の最終候補に選ばれたことで再び注目を集めています。

1位:『2023 제14회 젊은작가상 수상작품집(2023 第14回若い作家賞受賞作品集)』イ・ミサンほか著(文学トンネ/2023.4.5)
2位:『메리골드 마음 세탁소(マリーゴールド 心のクリーニング屋)』ユン・ジョンウン著(ブックロマンス/2023.3.6)
3位;『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
4位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2015.3.30)
5位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
6位:『아버지의 해방일지(父の解放日誌)』チョン・ジア著(チャンビ/2022.9.2)
7位:『고래(鯨)』チョン・ミョングァン著(文学トンネ/2014.4.16)
激しく生々しい人間の欲望を壮大なスケールで描き出した一大叙事詩。国際ブッカー賞の最終候補6作に選ばれたことで再び注目を集めています(受賞作の発表は5月23日予定)。邦訳本『鯨』(斎藤真理子訳/晶文社)も好評を博しています。
8位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
9位:『이토록 평범한 미래(これほどまでに平凡な未来)』キム・ヨンス著(文学トンネ/2022.10.7)
10位:『환상서점(幻想書店):眠れない夜になりますように』ソ・ソリム著(ハッピーブックトゥーユー/2023.2.28)

注目の新刊は以下のとおりです。
『이끼숲(苔の森)』チョン・ソンラン著(ジャイアントブックス/2023.5.2)
『千個の青』(カン・バファ訳/早川書房)の著者による3篇の連作小説です。地上が滅亡し、地下都市へと追放された人類の未来を背景に、6人の友人たちの愛と友情、冒険を描きます。

『나를 찾지 마(わたしを探すな)』キム・ボム著(クレイハウス/2023.5.2)
「韓国の奥田英朗」とも言われる著者による長編です。電子ブックで大きな人気を集め、書籍化されました。10年前に死んだはずの夫が、妻の再婚予定日の1週間前に現れた。受け取った死亡保険金はどうすればいいのか、なぜ今になって戻ってきたのか、再婚はどうなるのか……というストーリーです。どんでん返しを繰り返しながら、家族や愛の意味を探っていきます。内容はフィクションですが、著者自身の亡き父親を想いながら執筆したそうです。

『오늘의 세리머니(今日のセレモニー)』チョ・ウリ著(ウィズダムハウス/2023.5.3)
2011年に短編「犬五匹の夜」で大山大学文学賞を受賞しデビューした著者初の長編です。小都市で公務員として働くレズビアンの二人が、システムの盲点を利用してレズビアンカップルに婚姻関係証明書を発給します。そのことが広く知られ、婚姻を届け出たレズビアンカップルはいつしか101組に。やがて彼女たちはカップルとしての権利を要求しはじめる、というストーリーです。著作の邦訳本に『私の彼女と女友達』(カン・バンファ訳/書肆侃侃房)があります。

『각각의 계절(それぞれの季節)』クォン・ヨソン著(文学トンネ/2023.5.7)
『春の宵』(橋本智保訳/書肆侃侃房)や『レモン』(橋本智保訳/河出書房新社)、『まだまだという言葉』(斎藤真理子訳/河出書房新社)、『きょうの肴なに食べよう?』(丁海玉訳/KADOKAWA)などの邦訳本で日本でも人気の著者の新作短編集です。金裕貞文学賞を受賞した3作を含む7篇を収録。記憶や感情、関係の核心へと分け入り、一つの時代、一人の人物をじっくりと見つめます。(文/牧野美加)