リボとアン-だれも来ない図書館の2人のロボット(리보와 앤 -아무도 오지 않는 도서관의 두 로봇)

原題
리보와 앤 -아무도 오지 않는 도서관의 두 로봇
著者
オ・ユンジョン/絵 ヘマ
出版日
2023年1月31日
発行元
文学トンネ
ISBN
9788954690690
ページ数
120ページ
定価
11,500ウォン
分野
児童書

●本書の概略

穏やかな日曜日の図書館。「こんにちは、リボです。何かお手伝いしましょうか?」ロビーでいつものように来館者に声をかけるのは案内ロボット、リボ。人工知能を持つソーシャル・ロボットだ。そんな図書館に異変が起こる。ウイルス蔓延という緊急事態により図書館は閉鎖され、誰一人いなくなった。
残されたのはリボとお話しロボットのアンだけ。理由もわからないまま、毎日来館者を待ち続ける2人。やがて、本の大好きな少年ドヒョンの記憶がよみがえる。リボの感情メモリーに「懐かしい」という言葉が浮かぶ。数日後、少年が訪ねてきてくれた。少年との一瞬の再会と別れがリボの「思い」を募らせる。少年が私を待っている。私が少年を待っているのと同じように。少年とのメール交換も大事な日課になった。
そんな日が続くうちに、セーフティ機能がリボの行動を異常とみなす。このままでは初期化され、少年との思い出も消去されてしまう。必ずまた会いたい。そのとき、懐かしい足音が聞こえた。第23回文学トンネ児童文学賞大賞受賞作品。

●目次

私の名前はリボ/おかしな日曜日/緑の屋根の家のアン/後ろへ、後ろへ/待機モード/時間を過ごす方法/アンのお悩み相談所/帰ってきた記念日/フルビアの正体/少年が去った後/人恋しい夜に/ドアを開けて

●日本でのアピールポイント

新型コロナの感染が拡大した2020年の春以来、学校は本来の姿を失った。感染拡大を防ぐためのソーシャルディスタンスは、子どもたちがのびのび触れ合うことを阻んだ。給食では黙食が推奨され、わいわい語り合うはずの楽しい時間は封印された。関係の断絶は、子どもの成長に大きな負のインパクトを与えたに違いない。
物語は、つながりの回復を求めて進んでいく。リボは少年との記憶から「懐かしい」という言葉を学び、徐々に少年とのつながりを回復する。少年とAIロボットの「心」がしだいに通い合っていく様子が圧巻だ。アンとリボの楽天的なやり取りも楽しい。また、誰も来なくても毎朝ロビーに立ち続けるリボの姿は、コロナ禍でも懸命に働き続けた人々の姿とも重なる。AIと人間の未来の関係性についても示唆に富んでいる。
人はつながりを求める。つながりの中に生きてこそ、人間らしい豊かさが育まれる。本書は人間にとって何が大切かを気づかせてくれる。コロナ禍による断絶と孤独を経験した子どもたちにはもちろん、大人にも、未来の読者にも、共感を持って受け入れられるはずだ。

(作成:村山哲也)

オ・ユンジョン(文)
児童文学、SF童話作家。2016年、長編童話『最高の一日』で韓国アンデルセン賞銀賞を受賞し作家活動を始めた。科学的想像力を生かした作品を書く。『ドローン戦争』で第27回MBC創作童話大賞短編部門受賞、『クモの挨拶』で第12回チョン・チェボン文学賞大賞受賞。他に『宇宙へのカウントダウン』がある(いずれも未邦訳)。
ヘマ(絵)
イラストレーター。漫画やイラストなどで個性あるキャラクターを描く。作品に『イエロー・キューの生きている海洋博物館』の絵や、YA小説『学校が終わったら、ミステリー事件部』の表紙などがある。