敷居をまたいで(문지방을 넘어서)

原題
문지방을 넘어서 (생각 많고 고독한 내향인이 문지방을 넘어 만난 평안과 즐거움)
著者
ユン・スギョン
出版日
2019年8月16日
発行元
図書出版フォックスコーナー
ISBN
9791187514251
ページ数
316ページ
定価
15,000ウォン
分野
エッセイ

●本書の概略

本書は内向的な性格を持つ40代の独身女性の著者によるエッセイだ。副題は「考え事が多く孤独な内向人が敷居をまたいで出会った安らぎと楽しさ」。大人数で集まる場所が苦手で、一人でいるのが好きな“内向人”の著者が、家の外に出て(“敷居をまたいで”)得た経験や考えなどを様々なエピソードを通して綴っている。1部では、著者の恥ずかしがり屋な性格や一人で楽しめる趣味、親戚の集まりが苦手なことなどが書かれている。著者が仕事で明るく振る舞おうと無理をしていたが、先輩から「あなたにはその暗さが似合っているのに」と言われた話など、内向的な性格を肯定できる内容だ。2部では、著者が空港や書店、劇場や野球場などの好きな場所に行ったり、一人旅をしたりした時のエピソードが書かれている。好きな場所でのストレス解消法や、空港で偶然話しかけられたおばあさんの話など、家の外に出ることの良さを感じられる内容だ。3部では、童話や歌を例に出しながら幸せや自分らしく生きていくことについて書かれている。著者と同じく内向的な性格を持つ人々の背中を押してくれる内容だ。

「暗くて悲しい時はより悲しい音楽を聴いてもいい。より悲しい映画を観て思いっきり泣いても大丈夫だ。自分で自分の心を認めた後に感じて見られるものを探すことが私の立ち直り方だ。いつでも自分らしく生きるのが一番だ。」(本文p96より引用)

●目次

プロローグ
1部 私は内向人?
2部 敷居をまたいで
3部 ずっとこのまま自分らしく

●日本でのアピールポイント

本書のタイトルが「敷居をまたいで」であるように、本書は家の外で感じられる楽しさについて書かれている。内向的な性格の著者にとってはバスに乗って終点まで行くだけで小さな旅行になる。書店や劇場など何てことない日常の場所にも著者だけの喜びがある。旅先では一人だからこその思いがけない出会いもある。無理して遠くに行ったり誰かと一緒にいたりしなくても、幸せは意外と近くにあるものだということを教えてくれる。読者層は著者と同じく30代~50代の女性ではないだろうか。本書で著者も言及しているが、独身女性の結婚や老後についての考えが益田ミリさんの『すーちゃん』シリーズ(幻冬舎出版)と似ている部分があるため、女性からの共感を得やすいと考える。また、是枝裕和監督の映画「歩いても 歩いても」をはじめ、いくつかの映画や曲が登場するので、一緒に鑑賞するとより楽しめるかもしれない。自分をよく知り、誰に何と言われようと自分らしく生きていこうという著者の前向きなメッセージが感じられる本だ。内向的な性格の“内向人”にはぜひともおすすめしたい。

(作成:工藤 もも子)

ユン・スギョン
大学卒業後、映画制作会社に勤務。その後、市民団体での活動を経て、現在は小・中学校で子供たちに読書指導をしている。自ら出版社に企画案を送り、本書の出版に至る。これからも直進は難しいが自由に勇敢に自分らしく生きたいと思っている。