『#発言する女性として生きるということ』(チョン・ソヨン/著、李聖和/訳、クオン)

韓国SFの話題作『となりのヨンヒさん』の著者チョン・ソヨンさんによる初の邦訳エッセイ集『#発言する女性として生きるということ』(李聖和訳、クオン)が刊行されました。韓国SFの魅力について「社会問題に鋭く切り込んでいるところ、近い未来から遠い未来までまんべんなく俯瞰しているところ、そして、いかなるアイデンティティの持ち主やいかなる年の読者も排除しないために努力するというところ」(『ちぇっくCHECK』Vol.7特別寄稿)と語っていたチョン・ソヨンさんらしく、さまざまな社会問題に直面して疲弊し、語りたくても語れない、訴えたくても訴えられない人々の声を熱意でもって代弁したエッセイ集。「私たちは共に、絶えず声を上げ、お互いを思いやり、しっかりと手を携えて生きていける」という帯の言葉がとても心強いです。訳者の李聖和さんからメッセージを頂戴しましたので、ご紹介します。

本書は、『となりのヨンヒさん』(吉川凪訳、集英社)、「ミジョンの未定の箱」(『最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集』収、古川綾子訳、河出書房新社)でお馴染みの、SF作家、翻訳家、弁護士として多方面で活躍するチョン・ソヨンさん初の邦訳エッセイ集です。
第一部と第二部には、近年韓国で話題になった、人権、労働、マイノリティ差別などのさまざまな社会問題をテーマにしたエッセイが、第三部には、著者が国内外のSF作品に寄せた訳者あとがきと解説が収録されています。
著者は、日頃私たちが感じている閉塞感を鋭い視点で言語化すると同時に、何気なく見過ごしている社会の実相をあぶり出し、問題提起を投げかけています。
邦題のハッシュタグ(#)には、「声をあげ世に発信する」という意味が込められています。
おかしい、理不尽だと思ったことを声に出すのは、ときに大きな勇気を必要としますが、この本を通して、私たち一人ひとりの意識の変化と小さな行動の積み重ねが大きなうねりとなって世の中を変えていく力になるのだということ、これは遠い異国の話ではなく日本と地続きの問題であるということを感じていただければ幸いです。
私もそんな思いで、一語一句の重みを噛み締めながら、心を込めて訳しました。この本が、今この瞬間もそれぞれの場所で闘っている人たちに届き、勇気と励みになることを願っています。(李聖和)

『#発言する女性として生きるということ』(チョン・ソヨン/著、李聖和/訳、クオン)