●本書の概略
「親は子どもを愛していると言いますが、全ての親が精神的に成熟しているわけではありません」
韓国で「国民的子育てメンター」と呼ばれる精神科医が、親からの暴力、支配、過干渉などに傷つけられた人たちの心を癒し、彼らが自分の内面と向き合うための勇気を与えてくれる一冊。
2016年から韓国日報のウェブ誌面に心理相談コラムを連載してきた著者が、数多くの相談事例を通じて読者が抱える問題の原因を解き明かし、次のステップへ進むための具体的な方法を説く。
本書のPart1では親からの精神的・肉体的虐待、Part2では他者との関係、Part3では子どもとの関係、最後のPart4では自分自身との向き合い方について述べている。
語りかけるように綴られた文章は、読む人の心に優しく寄り添う。
目を背けたい過去のできごとに苦しんできたあなたに、対人関係や子育てに悩むあなたに、オ・ウニョン博士が贈る温かいことばと明快なアドバイス。
●目次
はじめに
Part1. 親なのにどうしてあんなことができたのでしょう
Part2. あなたのせいではありません、あの時は仕方なかったのです
Part3. だいじょうぶ、あなたの子はあなたとは違います
Part4. 苦しみの原因がわかったら、つぎは幸せになる方法を学びましょう
おわりに
●日本でのアピールポイント
スーザン・フォワードの著書『Toxic Parents, Overcoming Their Hurtful Legacy and Reclaiming Your Life』の邦訳、『毒になる親 一生苦しむ子ども』(玉置悟訳、毎日新聞社)が刊行されたのは1999年。以降「毒親」と言うワードは「アダルトチルドレン」を凌ぐトレンドとなり、関連図書の出版が相次いだ。「毒親ブーム」は親との確執や自罰感情に悩む多くの人の救いとなった一方で、トラウマの克服と自尊心の回復方法については具体性に欠けるとの指摘もあった。人々を取り巻く環境が当時とは大きく変化した現在においても、「親ガチャ」ということばの流行に見られるように保護者の人格や家庭環境が子に与える影響の甚大さは変わらない。
成長の過程で受けた心的外傷は、その後の人間関係に暗い影を落とす。特に親と子の絶対的な関係の中で、不安や親への憎しみを解決できずに罪悪感と自罰感情に苛まれる人は少なくない。本書は、そうした人たちへの具体的でわかりやすい解説と現実的な助言が反響を呼び、韓国内で20万部を超えるベストセラーとなった。圧倒的な支持を得た理由として、本書が相談者の気持ちに寄り添うだけにとどまらず、彼らが問題の根本的な原因を理解し、最終的に過去の自分と和解するための手引書として有用である点をあげたい。人は他者理解を通して自らを見つめ直すことができる。本書に収められた数々の相談とそれらに対する助言は、人間理解のための普遍性を持っている。現代の韓国社会だけでなく、地域や時代を越えて需要があるだろう。
かつて子どもだった全ての人に読んでほしい一冊。
(作成:柳美佐)