●本書の概略
文系出身ながらIT業界で30年近くキャリアを築き上げ、2020年アドビコリアの社長に女性として初めて就任した著者が、新入社員時代からこれまでに経験したエピソードと、そこから得た学びを振り返りながら、働き方に対するアドバイスをまとめた1冊。
個人として、またリーダーとして、キャリアアップを続けることができた方法や、そのために必要な考え方を紹介し、売上や成果以上に、日々働く中でより良い自分、より良い組織を目指す姿勢の重要性を伝える。最後に著者は自身の仕事論の原点として、田舎で小さな事業を立ち上げた亡き母からの学びを綴る――相手の気持ちを汲み取って、心から共感することこそ、ビジネスにおける成功の鍵だと。
●目次
プロローグ 私は有能な私を推薦します
1章 自分を信じることもコンピテンスです
2章 仕事のセンスは訓練で伸びます
3章 良いリーダーはチームのリズムを作ります
4章 私は常に成長できると信じています
5章 優れた組織は「社員中心」から始まります
6章 一緒に働きたい人のコンピテンスについて考えます
エピローグ とても身近にいた最高のメンター
●日本でのアピールポイント
著者は専攻分野ではない業界に飛び込んだにも関わらず、様々な企業を渡り歩いてキャリアアップを果たした。日本の新卒採用システムでも、いきなり未知の領域で仕事を始める人は少なくなく、著者の新人社員時代の苦労に共感する人も多いだろう。
企業のトップに立つ女性として注目されている著者だが、完璧を目指して時間をかけるよりも、まず挑戦することを選ぶといった個人としての姿勢や、社内外の協力体制を整えていくリーダーシップの手腕など、本書のアドバイスは女性性をベースに展開されているものではなく、仕事に悩む人であれば性別問わず参考になる内容だ。
女性役員や管理職の登用が進んでいないことは、日韓に共通する課題だが、制度的な支援だけに議論が終始しがちだ。しかし、悩みや課題に共感してくれるメンターやロールモデルの不在も、世の中の女性がビジネスで活躍する自身の姿を思い描きにくい一因だろう。著者が約30年のキャリアで得たノウハウが凝縮された本書は、働く女性にとっては悩んだときに頼れるメンターのような役割も果たしてくれる。
作成:須見春奈