『七月七日』(ケン・リュウ、藤井太洋 他/著、小西直子、古沢嘉通/訳、東京創元社)

東アジア全域にわたり伝えられている七夕伝説をはじめとし、中国の春節に絡んだ年獣伝説、不老不死の薬を求める徐福伝説、済州島に伝わる巨人伝説など、さまざまな伝説や神話からインスピレーションを得て書かれた十の幻想譚。日中韓三ヵ国の著者によるアンソロジーが誕生しました。

翻訳者の一人、小西直子さんから推薦のコメントをいただきました。

本書は日中韓3か国の作家さんたちの手になる伝説をベースにしたSFファンタジー短編集で、全10篇のうち韓国の作家さんのものは7篇収録されています。主に伝説・説話の宝庫とされる済州の伝説をモチーフとし、7人7様の想像の翼を羽ばたかせて編み出された物語は、どれも自由な発想とみずみずしい感性が魅力の作品に仕上がっています。宇宙人にさらわれ、戻ってきたら巨人になってしまった少女たち、酸素ボンベを背負い、身ひとつで宇宙を泳ぐ「潜り手」、地球上で人類が知的生物へと進化してゆくさまを目の当たりにする太陽系外生物の一族など、様々な登場人物(?)たちが架空の地球を舞台に生き生きと繰り広げる心温まる、ときにちょっぴり切ない7つの物語。そこへ七夕、年獣、奄美大島の実話をモチーフにした日中の3作品が加わって織りなす東アジアのファンタジー競演をお楽しみいただけたら幸いです。

『七月七日』(ケン・リュウ、藤井太洋 他/著、小西直子、古沢嘉通/訳、東京創元社)