『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら』(チョン・アウン/ 著  生田美保/訳 DU BOOKS)

“母親たちはなぜ、一日中家事をしていても「家で遊んでいる」と言われるのだろうか”という問題意識を掘り下げるとそこには「お金の問題が潜んでいる!」と辿り着いた著者が、副題に“15冊から読み解く家事労働と資本主義の過去・現在・未来”とある通り、日本でも翻訳されている話題の書を含む15冊を徹底的に読み解いていく教養エッセイです。日本でも人気を集めていた翻訳書『女ふたり、暮らしています。』(キム・ハナ、ファン・ソヌ著、清水知佐子訳、CCCメディアハウス)の章での著者の分析に思わず「ほぉー」と唸り、「母親」「主婦」といった役割に自分たち自身ががんじがらめになっている現実を容赦なく見せてくれる言葉に、どんどん背筋が伸びてくるような一冊でした。

翻訳者の生田美保さんからもメッセージを頂戴しました。

著者のチョン・アウン氏は、2人目の子供を妊娠し、それまで通っていた会社を辞めて子育てに専念することにした途端、あちこちから「家で遊んでいる」と言われるようになりショックを受けます。主婦は一日中家の中と外を行ったり来たりしながらさまざまな難易度の労働をこなしているのに、どうして「家でぐうたら遊んでいる」と言われるのか。そんな疑問からあれこれ本を読んで、考え、「原因はお金、すなわち資本主義だ」という答えにたどり着くまでの過程をまとめたのが本書です。
 最近は、女性も男性も、結婚している人もしていない人も、子どものいる人もいない人も、どこかみんな「自分は損をしている」と感じることが多いように思います。本書をとおして「男は外で働き、女は家を守る」という性別分業の起源を社会的・歴史的・経済的な脈絡から理解できれば、誰も疎外されることなく、みんなが自信をもって、気持ちよく助け合って生きていくためのヒントが見えてくるかもしれません。(生田美保)

『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら』(チョン・アウン/ 著  生田美保/訳 DU BOOKS)