『吾輩こそ猫である』(チェ・ジニョン/著、中川里沙/訳、実業之日本社)

猫の視点で人間の不思議な言動を語るコミックエッセイ『吾輩こそ猫である』(チェ・ジニョン著、中川里沙訳、実業之日本社)。猫から見たら、人間の行動は摩訶不思議なことばかり。でも人間にだってそれなりに理由がある。その理由がゆるいイラストとともにユーモラスに語られています。猫の視点は斬新です。
日本語版のタイトルがとても印象に残りますが、このタイトルについて編集を担当された実業之日本社の金潤雅さんにお話を伺ってみました。原著のタイトルは、直訳すると『人間たちは毎日』。しかし、猫という存在は日本人にとってとても親しみ深く愛されているものです。本書が猫についての本であり、猫の目線で人間を描いているという内容までひと目でわかるようなタイトルにしたいと考え、思いついたのが、誰もが馴染みのある夏目漱石の名著『吾輩は猫である』だったそうです。ここから猫の感じをもう少し強く出そうと『吾輩こそ猫である』というタイトルにされたとか。表紙の絵もタイトルにぴったり合っています。
奇数ページの右下に小さなイラストがあり、パラパラ漫画みたいに楽しめるのも本書の面白さのひとつです。訳者の中川理沙さんからメッセージをいただきましたので、ご紹介します。

本書は、猫の目に映る人間の姿を描いたイラストエッセイです。人間から見た、猫にまつわるコミックエッセイは日本でもたくさん発売されていますが、猫の視点による作品は珍しいのではないでしょか。猫というと私たち人間は「なにも考えていなさそう」「いつもダラダラしている」というイメージを抱きがちだけれど、猫にだってなにか言い分があるのかも…という著者のひらめきが詰まった一冊です。
著者のチェ・ジニョンさんはSNS上で多くのファンを魅了している注目のイラストレーターです。その作品は何気ない日常を切り取ったものが多く、思わず共感してしまいます。自らのイラストを「落書き」と紹介するのも、見た人が笑顔になってリラックスできるように、という思いがこめられているのではないでしょうか。
本書でも、猫と人間のコンビが織りなすユーモラスなやりとりと、“わたし”の一人称で語られる著者のメッセージが読者の心に寄り添います。肩肘を張らずに、物事を見る視点を変えてみること。著者が伝えるこの人生観こそ、つい頑張りすぎてしまう私たちに必要なものなのかもしれません。
韓国ならではの文化やことわざもたくさん出てくるので、韓国語を学習中の方にはより一層楽しんでいただけると思います。本書を読んで、ホッと一息ついてください。(中川理沙)

『吾輩こそ猫である』(チェ・ジニョン著、中川里沙訳、実業之日本社)