第6回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」受賞者決定!

K-BOOK振興会、株式会社クオンの共催(後援: 韓国文学翻訳院)で行われた、第6回「日本語で読みたい韓国の本」翻訳コンクールには、国内外から総勢125名の方にご応募をいただきました。ご応募いただき、ありがとうございました。

一次審査を通過した10名の作品を審査員(星野智幸、オ・ヨンア、古川綾子)による厳正な審査を行った結果、この度次の通り、各作品の最優秀賞者が決まりましたので発表致します。(文中全て敬称略)

⇒ コンクールの詳細はコチラから

【受賞者より】
「화장」最優秀賞 柳美佐

課題作の精読と翻訳原稿の推敲を重ねる過程で、これまでの読書がいかに表面的な理解にとどまっていたのかを痛感しました。そして解像度の低い世界しか見えていなかった自分の未熟さに気づきました。翻訳を通して世界を見つめなおす機会に恵まれた幸運に深く感謝せずにはいられません。
これまでご指導いただきました翻訳スクールの先生方、そして共に切磋琢磨してきた勉強仲間のみなさんにも心から感謝いたします。今回の受賞を励みとし、今後もたゆまず研鑽を積んでまいります。この度は本当にありがとうございました。

 

 

 

「나의 루마니아어 수업」最優秀賞 須見春奈

数年前、韓国語学習の延長線上にあるものとして翻訳に興味を持ち始めたのですが、翻訳の授業をいくつか受講する中でその楽しさを知り、いつか本格的に取り組んでみたいと思うようになりました。
このようなコンクールを通じて翻訳に挑戦できる機会があることに感謝の気持ちでいっぱいです。
作品を訳しながら韓国の風景や空気感を思い浮かべていましたが、思い描くイメージと訳文との間で試行錯誤する時間は苦しくも楽しい経験でした。
今後もいただいた賞を励みに翻訳への挑戦を続けたいと思います。

 

 

*なお、惜しくも受賞には至りませんでしたが、次の方々も一次選考を通過されました。
掲載を承諾いただいた方のみ、ここに掲載をさせていただきます(五十音順)。
林(イム) 久仁子、今関 理絵、遠藤 成美、呉 華順、佐藤 美歩、庭田 由巳江、中村 晶子

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【総評】
星野智幸(作家)

そうとうな体力としつこさを求められる「화장」と、それとは真逆の繊細な作品なようでいてからみつくような「나의 루마니아어 수업」という課題作に、これだけたくさんの方が挑まれていて、皆さんの韓国文学への強い思いを感じた。その中で受賞されたお二人は、原文を正確に読みとって訳文に反映している度合いにおいて、頭一つ抜けていた。
とはいえ、原文を解さない私からすると、日本語訳としてはまだもの足りなく感じたのも事実。韓国語を鍛えるのみならず、日本語の小説もたくさん読んでほしい。日本語の表現力を上げるためだけでなく、原語の文脈を深く読み解くためにも必要なことなので。

 

【審査評】
オ・ヨンア(翻訳家)

二作品とも難易度の高い課題でした。「화장」の歯ごたえのある文体、「나의 루마니아어 수업」の不穏なわびしさなど、全体を貫くトーンに注目し評価しました。翻訳になめらかな「読みやすさ」が求められるようになって久しいですが、必ずしもすべての原作が「読みやすい」とは限らないことからもわかるように、原作の文体を最大限生かす作業はどの訳者にとっても常に難しい問題です。審査では訳文の文学的創意性をとるか原文への忠実性をとるかでも意見が分かれました。新人賞ということもふまえ後者に比較的重点が置かれた点も指摘しておきます。

 

古川綾子(翻訳家)

皆さま、お疲れさまでした。今回は読み慣れたスタイルの作品と、そうでない作品における差が大きく現れたように感じました。
「화장」は全体的に意味の取り違えのような誤訳が気になりました。対照的な両者をいくつか配置することによって見えてくるテーマが活かせているとは言い難かったのも残念でした。
「나의 루마니아어 수업」は身近な社会や人物が描かれているためか、大きな誤訳は見受けられませんでした。その分、人物や風景、情景がリアルにイメージできる描写となっているかが評価の分かれ道になりました。
昨年の審査評にも書きましたが、今後も「原作の特性を考慮し、理解した翻訳」が求められていくと思います。

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授賞式は11月27日(日)に下記の通り、「K-BOOKフェスティバル2022 in Japan」の会場(ベルサール九段)とオンライン配信でその授賞式の模様をお届けします。
https://k-bookfes.com/events/6th_honyaku/

また受賞者による邦訳2作品は、「韓国文学ショートショートシリーズ」として2023年春に刊行予定です。どうぞご期待ください。