第4回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」受賞者決定!

K-BOOK振興会、株式会社クオンの共催(後援: 韓国文学翻訳院)で行われた、第4回「日本語で読みたい韓国の本」翻訳コンクールには、国内外から総勢138名ものご応募をいただきました。
一次審査を通過した7名の作品を審査員(中沢けい、きむ ふな、吉川凪、清水知佐子)による厳正な審査を行った結果、この度次の通り、各作品の最優秀賞者が決まりましたので発表致します。
(文中全て敬称略)

⇒ コンクールの詳細はコチラから

 

「어느 밤」 最優秀賞 金憲子さん
【受賞者より】
韓国語を学ぶまで、私にとって母国は遠い未知の世界でした。良い先生方や環境に恵まれて言葉の背景にある韓国社会に触れる楽しみを知り、縁あって通訳・翻訳業に携わる機会も得ましたが、今もまだ言語の壁の大きさを日々痛感しています。原文をいかに正確に理解し、適切な訳文に仕上げるのか。あれこれ考える楽しみと正確に伝えられるかどうかの不安は常に背中合わせです。今回、このような素晴らしい賞を頂くことができ、手探りのプロセスも間違っていなかったのかなと思えてとても嬉しく、光栄に思います。ありがとうございます。この感謝を胸に、今後も一層精進していきたいです。

 

 

 

「하나코는 없다」最優秀賞 朴澤蓉子さん
【受賞者より】
十数年間、映像翻訳に従事してきました。字数制限に苦しむことなく、とことん原文と向き合って翻訳してみたいと思い挑戦しましたが、結果的には自分の未熟さと向き合うこととなりました。原文から映像を思い浮かべ、それが的確に伝わる日本語にする、その難しさに愕然としつつ必死に訳した数ヵ月は苦しくも、幸せな時間でした。かけがえのない挑戦の機会、そして栄えある賞を頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

 

 

 

*なお、惜しくも受賞には至りませんでしたが、次の方々も一次選考を通過されました。
ここに掲載をさせていただきます(五十音順)。
音野阿梨沙、チャン・ハル、藤村道子、三橋洋美、T.M(東京都中央区)

 


【総評】
作品の声を聞く 中沢けい(作家)

2021年の翻訳賞の選考を無事に終えることができました。ここに至るまでの関係各位の御尽力に厚く御礼申し上げます。
世界的な感染症流行の中でも、韓国文学の日本語への翻訳を志す人は減ることはありませんでした。むしろ翻訳賞の応募総数から見れば、翻訳を志す人は増えていると言えるでしょう。そして、その応募者の背景には、多くの韓国語学習者の存在があることがひしひしと感じられます。多くの人が韓国語を学習するようになれば、翻訳の技術も向上し、韓国文学のみならず日本文学にも良い影響を与えるものが生み出されることが期待されます。
文芸創作を批評する時に「声が出てくるようになった」という表現が使われることがあります。文芸作品には個々の作品にその作品固有の声があるとされるのです。身体感覚を伴った表現とでも言えばいいでしょうか。翻訳は作品に込められた声を聞き取り、その声を日本語の表現の中で生かすということがどれほどむずかしいことなのか。幸い、その難しい仕事をなしとげた受賞作を選ぶことができました。今後とも、韓国文学翻訳への皆様のご理解を賜りたくお願い申し上げます。

 

【審査員評】
きむ ふな(翻訳家)

課題作はいずれも個性的な文体の作品だったので、その分、訳に工夫が必要だったと思います。受賞作はそうした工夫と作品に対する理解、適切な訳語、誤訳の少なさで選ばれました。最後まで競り合った候補作もありましたが、二人に絞らざるを得ないことは残念でした。
注の付け方は毎回議論になるところですが、丁寧過ぎる人もあれば、まったくつけてない人もいるなど、差異が大きかったです。日本語にない漢字語をそのままに訳したり、原文と違う句読点の乱用が目立つ作品もありましたが、注意が必要でしょう。誤訳を少なくするためにも、もう少し丁寧に調べる力をつけるといいでしょう。

 

吉川凪(翻訳家)

「어느 밤」は過去と現在、人物の台詞や主人公の思いなどが主人公の意識の流れに沿って区別なしに書かれている。そのため文脈を注意深く見て内容を判断しなければならないが、少し読み違えた応募作もあったようだ。当選作は他の作品に比べて誤訳が少なく、日本語の文章力において勝っており、審査員全員が1位または2位に推して総合点で1位となった。訳注はやや過剰な部分もある。
「하나코는 없다」の原文はかなりクセが強く、個性的な文体の雰囲気を日本語で表現できなければ翻訳の意味がない。当選作は訳語の選択などに関して難点もあるが、日本語のリズムに工夫している点が評価されて選ばれた。

 

清水知佐子(翻訳家)
「어느 밤」の原文はとても淡々とした歯切れのいい文章なので、ともすると味気のない訳文になりがちですが、受賞作は適度なリズム感を出しつつ上手くまとめられていました。原文に引っ張られることなく的確な訳語を選択していたことも評価されたポイントです。
「하나코는 없다」は、原文が少し難解ではありましたが、応募作全体を通して誤訳が多く、一次審査の段階ですでに評価に大きな差が出ました。前後の文脈やシチュエーションを考慮し、作品の舞台についてもよく調べながら、直訳から自然な日本語へと置き換えていくより一層の努力を期待したいと思います。


授賞式は7月に都内で開催予定です。
また受賞者による邦訳2作品は、「韓国文学ショートショートシリーズ」として今夏に刊行予定です。どうぞご期待ください。

なお、現在すでに第5回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」の課題作を発表しています。
ぜひこちらにも多くの皆さんの挑戦をお待ちしております。
⇒ http://k-book.org/transcompe/5thhonyaku/