●本書の概略
ソヨンは、フリルのついたワンピースよりも恐竜の絵のTシャツが好き。お人形より自動車が好き。力も強いし、数学だって得意だ。けれども、大人たちはありのままのソヨンを認めようとせず、「女らしくしなさい」といいます。一体「女らしさ」とは何なのでしょうか。
この本は、小さなソヨンが、大人になる一歩手前の少女に成長していく間の日記を絵本にしたものです。ただし、この日記には、特別なできごとや楽しかった思い出が綴られているわけではありません。この日記には、ソヨンが自分の好きなものを好きだと言ったり、やりたいことをやろうとしたりすると、なぜかそれを押しとどめようとする、大人たちの言葉やふるまいが書きとめられています。ソヨンは、そうした大人たちの言動に対して疑問を抱きます。「どうして?私は私なだけなのに」。本書は、周囲から押し付けられる「女らしさ」という固定観念をはねのけて、ソヨンが自分らしくあるための問いかけを記したものなのです。
本書にあるエピソードのひとつひとつは、些細でありふれたものです。しかし、それ故に「女らしさ」という固定観念がいかに私たちの中に深く染み込んでいるのかを表しています。
●日本でのアピールポイント
2019年12月に公表された「ジェンダー・ギャップ指数2020」で、日本は過去最低の153か国中121位を記録。#Me Too以降の世界的なフェミニズム運動の高まりの一方で、日本では、つい先頃も要職にある人物が性差別発言を行うなど、ジェンダー・バイアスの根深さを感じさせるニュースが後を絶ちません。そんな中、おとなりの国、韓国におけるフェミニズムに関心を寄せる人が増えているようです。
韓国のフェミニズム小説である『82年生まれキム・ジヨン』は、日本でも20万部のベストセラーとなり、韓国文学ブームの火付け役となりました。その主人公の名前「ジヨン」は、1982年生まれの韓国人女性にもっとも多い名前でした。作品の背景である韓国社会の文化や歴史には日本と異なる点があるのにも関わらず、多くの日本の読者に“私の物語”として読まれました。
『ソヨンのフェミニズム・ダイアリー』の主人公の名前「ソヨン」は、2004年から十数年の間、韓国の女の子につけられた中で一番多かった名前です。著者であるキム・ヨンジュは、後書きに「主人公ソヨンは、つまりあなたのこと」なのだと書いています。
“私が私であること”を肯定し、励ましてくれる本書が、日本の小さな読者にも“私の日記”として読まれることを願います。