教保文庫、2月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2024年2月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。1位は先月に引き続きロングセラーの『모순(矛盾)』でした。また、書籍より先に電子版が刊行され話題を集めた『마지막 마음이 들리는 공중전화(最後の心が聞こえる公衆電話)』が7位にランクインしました。10位のク・ビョンモ著『破果』は同作が原作のミュージカルが今月中旬からソウルにて上演予定で、邦訳版が2022年に小山内園子訳で岩波書店よりすでに刊行されています。

1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
2位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
3位:『메리골드 마음 사진관(マリーゴールド 心の写真館)』ユン・ジョンウン著(ブックロマンス/2024.1.12)
4位:『아주 희미한 빛으로도(ほんのかすかな光でも)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2023.8.7)
5位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
6位:『메리골드 마음 세탁소(マリーゴールド 心の洗濯屋)』(30万部記念限定フラワーエディション)ユン・ジョンウン著(ブックロマンス/2023.3.6)
7位:『마지막 마음이 들리는 공중전화(最後の心が聞こえる公衆電話)』イ・スヨン著(クレイハウス/2024.1.15)
8位:『황금종이(黄金の紙) 1』チョ・ジョンネ著(ヘネム出版社/2023.11.21)
9位:『살인자의 쇼핑몰(殺人者のショッピングモール)1』カン・ジヨン著(子音と母音/2020.2.14)
10位:『파과(破果)』ク・ビョンモ著(ウィズダムハウス/2018.4.16)

注目の新刊は以下のとおりです。
『마지막 마음이 들리는 공중전화(最後の心が聞こえる公衆電話)』イ・スヨン著(クレイハウス/2024.1.15)
この世を去った人の最後の心の声が聞けるとしたら‥‥‥。自ら命を絶った人の近しい人たちへ生前の様子を聞き取り、その原因や動機を明らかにしていく心理学的剖検。本作は、心理剖研センター長を務める主人公ジアンの目を通して、自ら命を絶った人や命を絶とうとしたことのある人、残された家族たちの葛藤や再生を「不思議な公衆電話」というファンタジーを融合させて繊細に描いた作品です。2023年フランクフルト図書展で話題を集め、紙媒体より先に刊行された電子版でもすでに多くの共感を呼んでいます。著者のイ・スヨンはこれまでに生と死、精神疾患をテーマにしたエッセイを複数発表し、自殺予防の運動や講演も積極的に行っている作家です。

『네임 스티커(ネームシール)』ファン・ボナ著(文学トンネ/2024.1.25)
中学生のウンソはその不思議な力を持つシールを同級生のミングから渡されます。ある人の名前を書いてその人に起こって欲しいことを念じると、書かれた人にその通りのことが起こるという小さなネームシール。中学生の主人公ウンソを中心に、思春期特有の葛藤や不安と心の成長を描いた青少年向け長編小説で、第14回文学トンネ青少年文学賞大賞を受賞した作品です。同賞の過去の受賞作にはイ・コンニム著『世界を超えて私はあなたに会いに行く』(矢島暁子訳、KADOKAWA)、ファン・ヨンミ著『チェリーシュリンプ わたしは、わたし』(吉原育子訳、金の星社)などがあります。

『오로라(オーロラ)』チェ・ジニョン著(ウィズダムハウス/2024.2.21)
『クの証明』がロングセラーを記録し、2023年には「ホーム・スイート・ホーム」が第46回李箱文学賞大賞を受賞したチェ・ジニョンの新作短編小説です。2022年に済州島生活を始めた著者が、これまで切り札として温めてきた済州島を舞台に愛と信頼を描いた作品です。出版社のウィズダムハウスは2022年11月より短編小説連載プロジェクト「ウィークリーフィクション」で毎週一作短編小説をホームページに掲載し、それらの作品を順次単行本化しており、本書はそのシリーズの1冊です。書籍は10×18㎝と小ぶりで薄く、内容も100ページ前後の短い作品なので、韓国小説を原書で読んでみたい学習者にもお薦めのシリーズです。(文/高上由賀)