教保文庫の2023年11月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。ハン・ガン著『別れは告げない』が、フランスの四大文学賞の一つ「メディシス賞」を韓国人作家としては初めて受賞したことで、再び大きな注目を集めています。『太白山脈』で知られるチョ・ジョンネの新作長編も話題です。
1位:『작별하지 않는다(別れは告げない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)
2位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
3位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
4位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
5位:『설자은, 금성으로 돌아오다(ソル・ジャウン、金城に帰る)』チョン・セラン著(文学トンネ/2023.10.30)
6位:『비가 오면 열리는 상점(雨が降ると開く店)』(ウィンターエディション)ユ・ヨングァン著(クレイハウス/2023.6.14)
7位:『파견자들(派遣者たち)』キム・チョヨプ著(パブリオン/2023.10.13)
8位:『황금종이(黄金の紙) 1』チョ・ジョンネ著(ヘネム出版社/2023.11.21)
『太白山脈』(筒井真樹子ほか訳/ホーム社、集英社)で知られる趙廷来(チョ・ジョンネ)の4年ぶりとなる新作長編が全2巻で刊行されました。資本主義社会の「唯一神」であるお金に向けられた、人間の飽くなき欲望と葛藤を鋭くえぐります。
9位:『단 한 사람(たった一人)』チェ・ジニョン著(ハンギョレ出版社/2023.9.30)
10位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
注目の新刊は以下のとおりです。
『화성과 나(火星とわたし)』ペ・ミョンフン著(ラビットホール/2023.11.15)
674階の巨大タワーが舞台のSF小説『タワー』(斎藤真理子訳/河出書房新社)の著者による、火星への移住を描いた連作小説集です。著者はこの本で、国家の存在なしに惑星規模の共同体を作っていく方法について想像したといいます。
『특별한 호두(特別なホドゥ)』ソ・ドンチャン著(子音と母音/2023.11.22)
第13回「子音と母音 青少年文学賞」を受賞したYA小説です。二人の父親と三人で暮らしているキム・ホドゥの物語を通して、「特別さ」も「平凡さ」も包み込む「愛」の力を描きます。
『겨울을 지나가다(冬をゆく)』チョ・ヘジン著(作家精神/2023.12.1)
余命宣告を受けた母を自宅で看取った「わたし」は、葬儀を終え、みなそれぞれの場所に帰っていったあとも母の家に残って暮らすことを決めます。「世のすべての母と娘に捧げる献辞」と評された小説です。著者の邦訳本には、大山文学賞を受賞した『かけがえのない心』(オ・ヨンア訳/亜紀書房)や『天使たちの都市』(呉華順訳/新泉社)、『光の護衛』(金敬淑訳/彩流社)などがあり、申東曄文学賞受賞作『ロ・ギワンに会った』(浅田絵美訳/新泉社)も刊行が予定されています。(文/牧野美加)