教保文庫、7月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2023年7月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。キム・スムやチェ・ウニョン、ファン・モガなど日本でもお馴染みの作家の新刊、近刊が目白押しです。

1位:『메리골드 마음 세탁소(マリーゴールド 心のクリーニング屋)』ユン・ジョンウン著(ブックロマンス/2023.3.6)
2位:『비가 오면 열리는 상점(雨が降ると開く店)』ユ・ヨングァン著(クレイハウス/2023.6.14)
3位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
4位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
5位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
6位:『풍수전쟁(風水戦争)』キム・ジンミョン著(イタブックス/2023.5.24)
7位:『너무나 많은 여름이(あまりにも多くの夏が)』キム・ヨンス著(レジェ/2023.6.26)
8位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
9位:『마당이 있는 집(庭のある家)』キム・ジニョン著(エリクシール/2018.4.30)
幸せな日常に疑念を抱きはじめた女性と、不幸な日常から脱出しようと奮闘する女性。二人の人生が交差しながら変化していく様子を描いています。本作を原作とした同名ドラマが今年6月から7月にかけて放映されたことで、再び注目を集めています。
10位:『아버지의 해방일지(父の解放日誌)』チョン・ジア著(チャンビ/2022.9.2)

注目の新刊・近刊は以下のとおりです。
『양자역학 소녀(量子力学少女)』イ・ミンハン著(タルン/2023.7.14)
中学生の少女ヒョニは身体が突然消えてはまた現れるという現象のため、平凡な日常を送ることができず苦しんでいました。そんなある日、その現象は量子力学のせいだと言う天才科学少女スアに出会います。物語の中に自然と科学の要素が織り込まれたYA小説です。電子工学を専攻した著者はハードディスク開発者として働きながら、2千年前のアレクサンドリア図書館と21世紀の韓国を行き来する『최초의 책(最初の本)』を書き、第8回子音と母音青少年文学賞を受賞しています。

『잃어버린 사람(なくしてしまった人)』キム・スム著(モヨサ/2023.7.28)
『ひとり』(岡裕美訳/三一書房)『Lの運動靴』(中野宣子訳/アストラハウス)『さすらう地』(岡裕美訳/新泉社)で知られる著者の新作長編です。日本からの帰国船や列車でやってきた人々でごった返す釜山の1947年9月16日の一日を描いた作品です。評論家パク・ヘジンは本作について「キム・スムの書いたすべての小説の結末であり、始まりである」と評しています。

『아주 희미한 빛으로도(ほんのかすかな光でも)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2023.8.7)
『ショウコの微笑』(吉川凪監修/牧野美加・横本麻矢・小林由紀訳/クオン)『わたしに無害なひと』(古川綾子訳/亜紀書房)、『明るい夜』(古川綾子訳/亜紀書房)などで日本でも人気のチェ・ウニョンによる3作目の小説集です。社会人入学した大学で出会った女性講師との交流や心の機微を描く表題作をはじめ、全7篇の中短編を収録しています。

『말 없는 자들의 목소리(声なき者たちの声)』ファン・モガ著(ラビットホール/2023.8.15)
SF小説家ファン・モガによる、1923年9月の関東大震災時の朝鮮人虐殺をモチーフにしたタイムスリップ歴史小説です。東京在住の著者は執筆にあたって、遺族や証言の収集者、研究者に聞き取りをおこない、当時の虐殺の現場や慰霊碑などを綿密に取材したそうです。著者の邦訳は『モーメント・アーケード』(廣岡孝弥訳/クオン)『透明ランナー』(廣岡孝弥訳/電子書籍)があります。(文/牧野美加)