教保文庫、5月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2023年5月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。クォン・ヨソンとチョン・ソンランの新作が早くもランクインしています。

1位:『메리골드 마음 세탁소(マリーゴールド 心のクリーニング屋)』ユン・ジョンウン著(ブックロマンス/2023.3.6)
2位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
2015年に刊行された作品が「ウネンナムシリーズN」として新たに刊行されました。
3位:『2023 제14회 젊은작가상 수상작품집(2023 第14回若い作家賞受賞作品集)』イ・ミサンほか著(文学トンネ/2023.4.5)
4位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
待望の邦訳(米津篤八訳、小学館)が間もなく刊行予定です。
5位:『아버지의 해방일지(父の解放日誌)』チョン・ジア著(チャンビ/2022.9.2)
6位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
7位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
8位:『고래(鯨)』チョン・ミョングァン著(文学トンネ/2014.4.16)
9位:『각각의 계절(それぞれの季節)』クォン・ヨソン著(文学トンネ/2023.5.7)
10位:『이끼숲(苔の森)』チョン・ソンラン著(ジャイアントブックス/2023.5.2)

注目の新刊は以下のとおりです。
『작별 곁에서(別れのそばで)』シン・ギョンスク著(チャンビ/2023.5.3)
『離れ部屋』(安宇植訳、集英社)や『母をお願い』(安宇植訳、集英社)、『オルガンのあった場所』(きむふな訳、クオン)、『月に聞かせたい話』(村山俊夫訳/クオン)など多くの邦訳で日本でもお馴染みのシン・ギョンスクによる連作小説です。外交官の夫とともにアメリカに渡るも韓国の軍事クーデターの余波で帰国できなくなった「わたし」が、かつてニューヨークで交流のあった「先生」に宛てて綴る手紙をはじめ、3通の手紙形式で「別れ」を見つめます。

『눈부신 안부(まばゆい挨拶)』ペク・スリン著(文学トンネ/2023.5.24)
『惨憺たる光』(カン・バンファ訳、書肆侃侃房)や『静かな事件』(李聖和訳、クオン)、『夏のヴィラ』(カン・バンファ訳、書肆侃侃房)などが邦訳されているペク・スリン初の長編小説です。ガスの爆発事故で姉を失った主人公ヘミは、その後両親の別居を機に母親と妹とともにドイツに移住します。周囲に心配をかけないよう罪のない嘘をつき続けるヘミの孤独と不安に気づき手を差し伸べたのは、1960~70年代西ドイツに看護師として派遣され定着した実のおばでした。ヘミは他国で前向きに暮らすおばたちに感化され、止まっていた日常を再びスタートさせます。

『파도가 닿는 미래(波が届く未来)』ソ・ユンビン著(ホブル/2023.5.30)
第5回韓国科学文学賞の中・短編賞を受賞した著者による初のSF小説集です。受賞作「ルナ」をはじめ4編が収録されています。「わたしたちの前に新たに繰り広げられる、傷を負ったものたちのための宇宙童話」と評されています。(文/牧野美加)