教保文庫、2021年の年間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の2021年の年間ベスト10(国内小説)と注目の新刊情報をご紹介します。1位と2位は『ダラグート 夢の百貨店』の1、2巻が占めました。両巻合わせて100万部を突破したのを記念して合本も刊行されました。人気詩人の新作エッセイも刊行されています。

1位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2020.7.8)
2位:『달러구트 꿈 백화점2(ダラグート 夢の百貨店2)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2021.7.27)
第1巻の発売後「ヒーリングファンタジー」として人気を呼び、第2巻刊行直後からランキングの上位を占めつづけてきました。両巻合わせて100万部を突破したのを記念して特別合本も刊行されました(2021.12.25)。
3位:『완전한 행복(完全な幸福)』チョン・ユジョン著(ウネンナム/2021.6.10)
4位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
企画制作会社conSeptによる、ヤングアダルト小説の舞台化プロジェクト「ヤングアダルト・シリーズ」第1弾として、同作を原作とした演劇が2月末から3月にかけて東京で上演されます。
5位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(15万部記念ウィンターエディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
6位:『제12회 젊은작가상 수상작품집(第12回若い作家賞受賞作品集)』チョン・ハヨンほか著(文学トンネ/2021.4.7)
7位:『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면(私たちが光の速度で進めないなら)』キム・チョヨプ著(ホブル/2019.6.24)
8位:『작별하지 않는다(別れられない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)
9位:『시선으로부터,(シソンから、)』チョン・セラン著(文学トンネ/2020.6.5)
昨年12月に邦訳本が刊行されました(斎藤真理子訳/亜紀書房)。
10位:『모순(矛盾)』(教保文庫リカバー限定版)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2021.5.25)

注目の新刊は以下のとおりです。
『므레모사(ムレモサ)』キム・チョヨプ著(現代文学/2021.12.25)
SF作家として次々と作品を発表し、昨年、編集者など出版関係者60人が選ぶ2021年「今年の作家」に選ばれた著者による初のSFホラーです。有毒性化学物質の漏洩事故により外部と完全に遮断され、幽霊とゾンビの都市と呼ばれている都市ムレモサ。そこに招待された6人の物語です。

『소마(ソマ)』チェ・サジャン著(whalebooks/2021.12.24)
少年ソマの父親はある村に向けて矢を放ちソマにその矢を拾ってくるよう言いつけますが、ソマが矢を見つけられずに戻ってきたところ、自分の村は焼き尽くされていました。すべてを失ったソマのその後を圧倒的なスケールで描きます。著者はポッドキャスト「知的対話のための広く浅い知識」のメンバーの一人で、同名の人文書シリーズはベストセラーとなっています。同書は著者の初の長編小説です。

『호텔 해운대(ホテル海雲台)』オ・ソニョン著(チャンビ/2021.12.30)
釜山育ちの著者が描く、釜山で生きる若者の物語7編を収録した小説集です。首都圏と地方の格差などもあぶり出します。

『내게 왔던 그 모든 당신(わたしのもとに訪れたすべての“あなた”)』アン・ドヒョン著(チャンビ/2021.12.20)
韓国を代表する詩人の一人アン・ドヒョンの5年ぶりとなるエッセイ集です。2015年から書きためたエッセイがまとめてあります。詩を書いていなかった時期に出会った人々とのエピソード、故郷に家を建て自然の中でゆったり暮らすようになった生活、好きな詩や本に関する話などが収められています。著者の邦訳本に『幸せのねむる川』(藤田優里子訳/青春出版社)、『小さく、低く、ゆっくりと』(ハン・ソンレ訳/書肆侃侃房)などがあり、詩人白石(ペク・ソク)の生涯を描いた『백석 평전(白石評伝)』の邦訳本(五十嵐真希訳/新泉社)も刊行予定です。

『계절 산문(季節のエッセイ)』パク・ジュン著(タル/2021.12.21)
韓国で大人気の詩人パク・ジュンの4年ぶりとなる新作エッセイ集です。K-BOOKフェスティバル2021のイベント「박준と語り合う、詩人박준(パク・ジュン)とその世界。」にご登場いただき、好評を博しました。。

『어서 오세요, 고양이 식당에(いらっしゃい、猫のレストランへ)』イ・ヨンハン著(文学トンネ/2021.12.22)
詩人、旅行家であり、猫に関するエッセイも多数刊行している著書による新作フォトエッセイ。13年間撮りためてきた、主に路上で出会った猫たちの写真にエッセイが添えられています。邦訳書に、野良猫の日常を描いた『さよなら、猫よ ありがとう』(猫咲スノー訳/ポルケ)があります。(文/牧野美加)