地域の読者の拠点空間「チャンビ釜山」オープン(韓国通信)

韓国の大手出版社、創批(チャンビ)による地域の読者のための拠点空間「チャンビ釜山」が4月19日、釜山駅近くにある築100年の建物内にオープンしました。チャンビの刊行図書が展示・販売されているほか、読書やブックトーク、読書会など多目的の空間、作家の仕事場を再現した常設展示室が併設されています。ソウルのチャンビ社屋内にはラウンジスペース「クラブ創作と批評」がありますが、地方にこうした施設ができるのは初めてで注目を集めています。「チャンビ釜山」チーム長のチェ・ドヨンさんに案内してもらいました。

 

 

 

 

 

 

出版社チャンビの原点は1966年に創刊された文芸・社会批評の季刊誌『創作と批評』です。74年には出版社「創作と批評社」を設立して発行を続けますが、80年に軍事政権によって強制廃刊に追い込まれ、85年には出版社の登録まで取り消されます。しかし翌86年「創作社」という社名で新たに登録し、民主化運動の流れに乗って不定期刊行物『創批1987』を発行。88年にはようやく『創作と批評』が復刊され、「創作と批評社」の社名も取り戻しました。現在は季刊誌以外に小説や詩集、児童書、絵本、中学・高校の教科書の出版まで幅広く手がけています。

 

 

 

 

 

 

「チャンビ釜山」は1922年に建てられた赤レンガのビルの2階に位置します。この建物は当初、釜山初の近代式総合病院「百済病院」として建てられ、32年の閉院後は中華料理店や日本軍将校の宿舎として使われました。45年の解放後も治安隊事務所や中華民国領事館、結婚式場などさまざまな用途で使用されてきました。補修もされていますが、壁や柱など一部は当時のまま残されています。

 

 

 

 

 

 

「チャンビ釜山」のメインホールには小説や詩集、児童書、絵本など、チャンビの刊行図書が多数並んでいて、背に白いラベルが貼ってあるものは館内で自由に閲覧できます。販売用の図書(10%引き)は「今、社会の流れを読む」「鼻先をかすめる春風とともに読みたい本」など、さまざまなテーマでキュレーションされていて、定期的に入れ替えられる予定です。「本1ページ、韓酒ひと口」という伝統酒と本のコラボコーナーもありました。ショーケースの中には『創作と批評』の創刊号や復刊号、50周年記念号のほか、兪弘濬(ユ・ホンジュン)の『私の文化遺産踏査記』の直筆原稿、「創作と批評社」が出した新聞広告なども展示されていました。

 

 

 

 

 

 

メインホール隣の小部屋には『創作と批評』の創刊号をはじめ、古いバックナンバーが並んでいます。フロアの中で一番日当たりのいい部屋なので、チャンビの原点である『創作と批評』を展示することにしたそうです。チェさんが手にしているのは68年夏号ですが、漢字はごく一部のみで、ほぼすべてハングルで表記されていました。当時はまだ「創作と批判社」の設立前なので、一潮閣という出版社から出されています。

 

 

 

 

 

 

常設展示空間「作家の部屋」は作家の仕事場をイメージした空間となっています。そっくり再現されているわけではありませんが、展示されている文房具や小物、書籍などは実際に作家本人の私物だそうです。3~4カ月ごとに入れ替える予定だそうで、今は『すいかのプール』などで知られる絵本作家アンニョン・タルさんの部屋になっています。数多くのスケッチはもちろんのこと、『당근 유치원(にんじん幼稚園)』の手作りのタイトル文字なども展示されていて、一冊の絵本が生まれるまでの膨大な過程を垣間見ることができました。

 

 

 

 

 

 

季刊誌のタイトルを冠した「創作ホール」「批評ホール」には大きなテーブルが並んでいて、明るく落ち着いた雰囲気のなか静かに読書を楽しむのにぴったりです。季刊誌の定期購読者やチャンビのオンライン読書コミュニティー「스위치(スウィッチ)」会員などは無料で2時間利用できます。レンタルスペースとしての活用も可能です。天井には1972年の火災で黒焦げになった角材が展示用に埋め込まれていて、この建物の持つ歴史が感じられました。現在、イ・ヒョン(4/30)、イ・ヒヨン(5/14)、チャン・リュジン(6/4)各作家を招いてのブックトークが予定されています。その様子は追ってご紹介します。(文・写真/牧野美加)

 

 

 

 

 

 

チャンビ釜山
釜山市東区中央大路209番ギル16 2階 (地下鉄1号線釜山駅7番出口徒歩2分)
利用時間:10~20時
休館日:毎週月曜日