主婦は家でぐうたらしているのか 男たちが文字に封印した家事労働―社会×歴史×経済の秘密を暴く (당신이 집에서 논다는 거짓말 )

原題
당신이 집에서 논다는 거짓말
著者
チョン・アウン
出版日
2020年5月18日
発行元
千年の想像社
ISBN
9791190413107
ページ数
259
定価
14,800ウォン
分野
人文

●本書の概略

育児を理由に会社を辞めた筆者が先輩に言われた。‘最近は家でぐうたらしてるの?’

こんな言葉が筆者を傷つけ、落ち込ませた。こうした言葉が出てくる社会の仕組みはどこから始まったのか?家事は労働として価値が無いのか?筆者はそんな問題意識をもって15冊の本を読み、考えた。これは子をもつ主婦だけではなく、子どものいない主婦、結婚していない女性たちすべてに関わる問題だと。またすべての男性たちの問題でもある。この本では、読書による心の変化を旅に例えているが、やがて資本主義、家父長制に対する疑問へとたどり着く。本来家事、育児は生命を支え、魅力的な役割と価値をもつはずだ。従来の資本主義のシステムがほころびている現在、家事、育児という働きを男性と分かち合う重要性を、筆者はあらためて主張する。

 

はじめに

1章 主婦が暮らす離れ小島  “家でぐうたらしているの?”

主婦の世界はなぜこれほど異質なのか ソースタイン・ヴェブレン『有閑階級の理論』

職場に復帰してもまた辞めてしまうだろうか レスリー・ヴェネツ『女性にとって仕事とはなにか』

料理が嫌いになったわけ ラ・ムンスク『専業主婦ですが』

 

2章 ‘お金’が問題だ

私が暮らす世界はどんなところか カール・マルクス『資本論』

私はなぜニュースにならないのか カトリーネ・マルサル『ところでアダム・スミスさん、夕飯は誰が作ったの?』

3人の子どもを育てた専業主婦はなぜ年金をもらえないのか ナンシー・フォルブル『見えない心』

 

3章 資本主義社会で女性として生きること

誰がなぜ女たちを焼いたのか シルヴィア・フェデリーチ『キャリバンと魔女』

誰が誰に依存するのか マリア・ミーズ『家父長制と資本主義』

共存のために何をするべきか パク・カブン『フォビア フェミニズム(フェミニズム嫌い)』

身体に閉じ込められた自分をどう見つめるか ロイ・F・バウマイスタ『消耗される男たち』

 

4章 境界を超えた世界

なぜ家事に賃金を払うべきなのか シルビア・フェデリーチ『革命の零点』

尼さんが『父親修行』なんて本を出したらどう思われるか ポムニュン『母親修行』

非婚女性と既婚女性は連帯できるか キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』

主婦たちはなぜ自分の家族さえ無事なら良いのか ソ・ヨンナム『たんぽぽククス店』

 

おわりに‐資本主義が起こした対立は嘘だった

●日本でのアピールポイント

15冊のタイトルを見ると、とっつきにくそうな本があることも事実だ。しかし筆者はどんな内容の本に対しても、先入観を持たずに読みこなそうとしている。また、いつも自分の実感、体験談(年配の女性たちに‘子どもを置いて仕事をするなんて’となじられたことなど)を原点にしているからか、それぞれの本の世界に自然に興味が湧いてくる。何冊かは邦訳されているが、ここに紹介された15冊すべてを手にしたくなる、良質の読書案内である。

作成:前田 田鶴子

チョン・アウン
ヘッドハンター、翻訳家、小説家。2013年『モダンハート』でハンギョレ文学賞受賞。長編小説に『蚕室洞の人々』『素顔の愛』、良い母親になろうとした強迫観念からの気づきをテーマにした読書ノート『お母さんと読書』(2018年)などがある。