教保文庫、5月の月間ベストと新刊(韓国通信)

教保文庫の5月の月間ベストセラー(国内小説)と注目の新刊をご紹介します。新刊コーナーでは、『7年の夜』や『種の起源』の著者チョン・ユジョンと『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者チョ・ナムジュの作品が注目を集めています。

1位:『10 젊은작가상 수상작품집(10回若作家賞受賞作品集(2019)』(文学トンネ/2019.4.5)

大賞を受賞したパク・サンヨンの『우럭 한 점 우주의 맛 (クロソイひと切れ、宇宙の味)』をはじめ、キム・ヒソン、ペク・スリン、イ・ジュラン、チョン・ヨンス、キム・ボンゴン、イ・ミサンの計7人の作品が収録されています。

2位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31) 

3位:『82년생 김지영(82年生まれ、キム・ジヨン)』 チョ・ナムジュ著(民音社/2016.10.14) 

4位:『내게 무해한 사람(私に無害な人)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2018.6.30)

5位:『젊은작가상 수상작품집 10주년 특별판(若い作家賞受賞作品集10周年特別版)』 (文学トンネ/2019.4.5)

6位:『레몬(レモン)』クォン・ヨソン著(チャンビ/2019.4.30)

7位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)

8位:『위저드 베이커리(ウィザード・ベーカリー)』(ハードカバー版)ク・ビョンモ著(チャンビ/2014.2.10)

同作のソフトカバー版が2009年に刊行されてから10年となるのを記念して、今年3月末に新たな表紙の特別限定版が刊行されました(完売)。それを機に再び注目を集めているようです。

9位:『쇼코의 미소(ショウコの微笑)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2016.8.10)

10位:『진이, 지니(ジニ、ジニ)』チョン・ユジョン著(ウネンナム/2019.5.27)

新刊コーナーでは、月間ベスト10位にランクインしたチョン・ユジョンの長編小説『진이, 지니(ジニ、ジニ)』と、『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者チョ・ナムジュの長編小説『사하맨션(サハマンション)』(民音社/2019.5.28)が目を引いていました。

『진이, 지니(ジニ、ジニ)』は、邦訳されている『七年の夜』(カン・バンファ訳/書肆侃侃房)や『種の起源』(カン・バンファ訳/早川書房)が日本でも人気を博している、“ミステリーの女王”チョン・ユジョンの3年ぶりの長編小説です。これまでとは雰囲気の違うファンタジー小説で、人類にもっとも近いDNAを持つ霊長類ボノボと霊長類研究センターの飼育員の交流を描いています。昨年11月に著者をインタビューさせていただいた際、この作品のために京都大学霊長類研究所を取材されたことを語ってくださいました。

ジニ、ジニ

 

 

 

 

 

 

 

チョ・ナムジュの長編小説『사하맨션(サハマンション)』(民音社/2019.5.28)は、ディストピアや社会の不条理さ、社会的弱者・少数者、差別などがテーマとなっています。物語の舞台は、ある企業が都市を買い取って本国から独立した都市国家「タウン」。一定の経済力と専門能力を満たす者だけに住民権が与えられます。そこで生活する、タウンにも本国にも属さない人々「サハ」の姿を描きます。帯文をチョン・セランが書いています。

サハマンション

 

 

 

 

 

 

韓国の国民的な女性作家、朴婉緒(パク・ワンソ)の代表作である自伝小説『그 많던 싱아는 누가 다 먹었을까(どこにでもあったあのスイバは誰が食べつくしたのか)』が装いも新たに登場しました。既刊本を新たな表紙で刊行する「Re-cover : K」シリーズの1冊です(熊津知識ハウス/2019.6.4)。タイトルにあるタデ科の植物スイバの絵が描かれています。邦訳本は『新女性を生きよ』(朴福美訳/梨の木舎)というタイトルで刊行されており、本サイトの「日本語で読める韓国の本」で紹介したこともあります。(文・写真/牧野美加・五十嵐真希)

パク・ワンソ