【K-BOOK振興会だより】労働者の声を伝える本、40歳のための本etc/K-BOOKらじおは6月13日で150回放送へ

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K-BOOK振興会便り  2025年6月号        http://k-book.org/
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5月30日-6月2日、光州に行ってきました。ハン・ガン著『少年が来る』を読んだ読者49名と一緒に、
5月の光州で、見て、聞いて、話していると、昨年12月の出来事、大統領選前と言うことも重なり、
45年前のできごとが繰り返されずに済んだことを改めてよかったと実感しました。
もうこんなことが繰り返されることはありませんように、そう願わずにはおられません。(ささき)

◆◇今月のTOPIK◇◆

●イベント情報●
6月14日(土):【チェッコリ/会場+オンライン】
韓国の文芸評論家2人が語る「ハン・ガンと尹東柱の文学世界をたどるひととき」
ゲスト:ユ・ソンホ、キム・ウンギョ
https://chekccori250614.peatix.com/

6月22日(日):【マルジナリア書店/会場+オンライン】
『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』 刊行記念トークイベント特別無料開催
ゲスト:小山内園子 柳沼雄太
(会場)
https://yorunoyohaku.com/items/66c89ba4cac6f91a1ec4d51d 

(オンライン)
https://yorunoyohaku.com/items/679a2d6f1435c109afc774f3

6月25日(水):【チェッコリ/会場】
チェッコリ読書クラブ:チェッコリ読書クラブ:テーマ本は『大都会の愛し方』(パク・サンヨン 著、オ・ヨンア 訳)
モデレータ:竹田信弥
https://chekccori250625.peatix.com/

◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆

人文 『私の価値はいくらですか(나는 얼마짜리입니까)』
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●労働現場の実態を垣間見せる75人の声

労働運動家で国会議員の故・ノ・フェチャンの志と夢を受け継ぎ、平等で公正な韓国社会の実現に貢献することを目的として創立されたノ・フェチャン財団とハンギョレ新聞が手を組み、2022年5月から毎週連載しているコラム「6411の声」に寄せられたなかから、75人の声を1冊にまとめたもの。「6411」は、ノ・フェチャンがある演説において、韓国社会における労働者の姿を6411番バスの乗客を例に挙げて表現したことから、彼らを象徴する言葉として使われるようになった。
地下鉄も動いていない午前4時。6411番の始発バスに乗り込むのは、主に都心の江南(カンナム)へ出勤するビルの清掃労働者、移民労働者、ケア労働者たち。彼らをはじめとする透明人間のような労働者――物流センタースタッフ、と畜検査員、農夫、結婚移住女性、バイク便ライダー、社会福祉士、タトゥーイスト、ウェブ漫画家など――が、自らの労働現場での経験をA4用紙1枚に書き綴った。見えないところで私たちの社会を支えている労働者の声を通じ、この社会が抱える問題を解決する糸口がつかめたらと願う。
https://k-book.org/yomitai/250512/

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小説 『私があなたに会いに行くなら(내가 너에게 가면)』
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●「あなたの心強い味方になってあげる」この言葉がテーマとなるハートウォーミングな物語

小さな港湾都市で孫娘ソンジュと二人暮らしのジョンオク。物語はジョンオクのお葬式から始まる。生前、善い行いをしたからとこの世に九か月間とどまることを許され、一人ぼっちになったソンジュを見守る。孫娘ソンジュは、昼間は小学校で学童保育の先生として働き、夜はボクシングの練習に励んでいる。自分自身に非常に厳しく、食事制限、トレーニング、また誰に対しても平等であることを自身に課している。減量のためご飯をまったく口にしないソンジュに、せめてパンでも食べてほしいと願うジョンオクだった。ジョンオクのお葬式の日、向かいの葬儀会場で見かけた女の子エリンは、新学期にソンジュのクラスに入ってきた。エリンは母親を亡くし、父親とも遠く離れていたが、叔父と一緒に暮らしていた。小学校に迎えに来るエリンの叔父ドヨンは、手作りのパンやお菓子をエリンと一緒に食べようとソンジュを誘う。少しずつドヨンに心を開くようになるソンジュ。ドヨンと親しくなりながらエリンはいっそうソンジュになつき、同じボクシングジムにヨドンとともに通うようになる。この世にとどまりソンジュを見守っているジョンオクにとって、ドヨンとソンジュの仲が気になるところだが、パンを口にする姿を見て安心する。ジョンオクの生前の善行とは、両親に虐待されていた孫を引き取り育てていた友人が亡くなり、その孫娘ソンジュを引き取ったことだった。この世にとどまる最後の日、ソンジュとエリンのボクシングの試合の日だったが、ソンジュの将来に何の心配もなく、明るくあの世へと旅立った。そんな田舎町での生活を通して繰り広げられる物語は、大きな事件もなく穏やかに幕を閉じる。
https://k-book.org/yomitai/250519/

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実用 『もう遅いと思っているあなたのための キムミギョン40歳のためのレッスン(増補版) (이미 늦었다고 생각하는 당신을 위한 김미경의 마흔 수업 확장판)』
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●「40歳ブーム」を起こした『キム・ミギョン40歳のためのレッスン』増補版

2023年出版業界に衝撃が走った。「40歳ブーム」を起こした『キム・ミギョン40歳のためのレッスン』が2月に刊行されるやいなや、全国の書店で総合1位を獲得、7ヶ月で20万部を突破し、「40歳」に対する従前の観念をくつがえしてしまった。
本書は同年12月に出版されたその増補版である。
社会で責任を担う40代は、ひたすら突っ走るのではなく、日々のルーティンを地道に続けることで持続できるのだ。B.O.Dとは、Being(存在)、Organizing(企画)、Doing(実行)の合成語で、著者の長年の自己啓発ノウハウを集大成した自己成長と癒しの方法論なのだ。
今回の「ミラクル・ルーティン B.O.D」では、B.O.Dそれぞれの説明からダイアリーの書き方まで、追加された70頁で詳しく解説されている。
本書『キム・ミギョン40歳のためのレッスン 増補版』は、韓国初の「40歳の再定義」からマインドセット、そして自ら実践できる方法論までを完全に網羅した、40代のための完璧なガイドブックである。
https://k-book.org/yomitai/250526/
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◆◇日本語で読める韓国の本◇◆

『ドロシーマンション』(カヒジ 著/ 加藤慧 訳/ 303BOOKS)
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現実世界でもっともっとさまざまな「らしさ」が認められる世の中であってくれたら、そう願わずにいられない今日この頃です。絵本ならではの温かみがより一層、「らしく」あることを伝えてくれている一冊が誕生しました。
本作が初めての絵本だったという著者カヒジさん自身が経験してきた、さまざまな思いから仕上げた作品には、自分自身の「好き」や「らしさ」を認めるカラフルな世界が美しく描かれています。その魅力を大人も子ども一緒にじっくり味わってみませんか?訳者の加藤慧さんから推薦コメントを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/250508/

 

『やさしいことば、ゆうきがでることば』(コ・ジョンウク 文、リリア 絵/ 藤田麗子 訳/パイ インターナショナル)
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作者のことばに「ことばには、その人の心がこもっています。とげとげしいことばをつかう人は、心にゆとりがありません。ことばがやわらかくてすてきな人は、心がゆったりしています。」の言葉に、改めて大きく頷きながら、ページをめくりました。子どもたち向けの絵本のようでいて、実はオトナたちに改めて「言葉」について考えさせる、いや気づかされる、そんなオトナも子どもも一緒に楽しむ絵本です。一緒に「言葉の魔法の世界」を楽しんで欲しいと思えました。訳者の藤田麗子さんから推薦のメッセージを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/250529/

◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆

教保文庫、4月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
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今年で16回目を迎えた若い作家賞の作品集が初登場で2位にランクインしました。注目の新刊では、映画の公開で再注目されているオカルト小説や、若手作家が現代韓国の労働事情を描いたお仕事アンソロジーをとりあげています。
https://k-book.org/publishing/2025050802/

教保文庫、4月の月間ベストと注目の近刊(エッセイ)
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『殺人者の記憶法』で知られるキム・ヨンハと、ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンのエッセイが発刊されて間もないにもかかわらず、それぞれ1位と2位にランクインしました。注目の新刊では、自閉スペクトラム症と診断された子どもの母親が書いた育児エッセイを紹介しています。
https://k-book.org/publishing/20250508/

◆◇5月のK-BOOKらじお◇◆

#145 仏教ブームに、不安を乗り越える本、そして尹東柱の図書館|ソ・ハナの韓国の本、ウロウロてくてく
http://k-book.org/news/radio_145/

#146 「~ねばならない」を止めたYUKIさんの目から鱗の読書法や語学学習法まで盛りだくさん!|わたし、これ読みました
https://k-book.org/news/radio_146/

#147 空白のある作品に空白を残して訳すことの難しさを痛感!デビュー5年で15冊を手掛ける小笠原藤子さん|わたし、これ訳しました
https://k-book.org/news/radio_147/

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_____ミニコラム_______
〈五十嵐真希の小さな翻訳恋物語〉

♯5 寄り道

翻訳においてソース言語(原文の言語)とターゲット言語(翻訳後の言語)の両方の言語力が重要なのはもちろんですが、調査力も言語力と同じくらい必要です。インターネットが家庭に普及する前は、図書館に通ったり、公共機関に問い合わせたり、あらゆる手段を用いて調査したそうです。著者に確認するために手紙を書いてエアメールで送っても、届いたかどうかわからないまま数か月が過ぎ、本が出る頃にお返事が来たという話を聞いたこともあります。

以前、英文学の翻訳家である越前敏弥さんが、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』を翻訳したときのエピソードを講演会で披露されたことがありました。

『ダ・ヴィンチ・コード』はルーブル美術館が舞台になっています。日本の読者はとても細かく作品を読むので、美術館の描写について原文に誤りがないか、例えば化粧室の場所や絵画の場所などを、現地に住む知り合いに確認してもらったと。

インターネットがない時代にもし私が翻訳の仕事を始めていたら、根気も人脈もないので長続きさせることができなかったでしょう。アン・ドヒョンさんの『詩人白石――寄る辺なく気高くさみしく』を翻訳して出版したとき、「日本語版に寄せて」に「長い時間をかけて、念入りに事実関係を確認しながら翻訳に骨を折ってくれた」と書いていただいたのですが、このときは、さまざまな書籍はもちろんのこと、韓国の国立中央図書館のサイトと玄譚文庫(旧・雅丹文庫)のサイトに非常にお世話になりました。

国立中央図書館のサイトには新聞アーカイブもあり、1883年から1960年代の新聞記事841万件を新聞毎に検索できます。翻訳中によく見たのは『毎日申報』(1937年以降は『毎日新報』)と『満鮮日報』。解放前に活躍していた小説家や詩人たちの掲載作品や出来事などを確認したのですが、つい、全く関係ない記事に眼がいってしまい、調査の目的が何だったか忘れてしまったこともしばしば。

『毎日新報』で全朝鮮蹴球選手権大会を調べていたとき、「許英粛献金」という記事を発見しました。許英粛は、韓国近代文学の祖と称され、また民族反逆者とも評される李光洙と結婚して、1938年6月に最初の近代式産院を開業した人物です。たちまち許英粛の人生に興味が湧いてネットサーフィンしてしまい……。

長い時間がかかってしまったのは、このように寄り道をしたからなのです。今も韓国の小説家や詩人たち、その作品の調べ物をしていますが、いろいろなキーワードに引っかかっては寄り道をしてばかり。

たとえば、1923年に朝鮮で創刊された詩専門同人誌『金星』を調べていたら、創刊号の原本を玄譚文庫のサイトで見つけました。発行人が「柳美澤梅子」という日本人であることがわかり、どんな人なのか知りたくなったり(調べきれなかった)、装幀が「我らの願いは統一」を作詞した安硯柱であることがわかったり。広告にある雑誌『新女性』11月号の特集「男女交際はどうあるべきか」も気になって迷走。

役に立たない寄り道ですが、拾いあげた豆々知識をやっとここで披露することができました。ちなみに、『金星』創刊号はこちらです。http://archive.adanmungo.org/ebook/1456429838.1178/1658276523.839/

玄譚文庫(http://adanmungo.org/)は韓国語の表記しかありませんが、貴重な資料をさまざま見られますので、 きっとあちらこちら寄り道したくなると思います。
(五十嵐真希)

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発行:一般社団法人 K-BOOK振興会

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