●本書の概略
地方の貧しい家庭に生まれ、ソウルの片隅で少女工として職業人生をスタートさせた著者、ケリー・チェ。そんな彼女が、ヨーロッパ12ヵ国で30を越えるビジネスを展開し、6000人の雇用を創出するグローバル企業の会長にまでなった背景に、どんな思考があったのか。彼女が考える本当の‘富’とは?
その成長を可能にしたのが、‘Wealth=富’と‘Thinking=思考’を掛け合わせた造語‘Wealthinking=富の思考’だ。著者の自己開発と経営思想の集大成と言えるだろう。
著者によれば、‘富’は‘カネ’と同義ではない。経済的に豊かであるだけでなく、周りの人をエンパワーメントし、社会に貢献する完成した人格者こそが、真の意味での‘富める者=富者(プジャ)’だ。そんな‘富者’になるため、意識の基礎となる「七つの思考の根」を固め、夢や目標を明確にするための「六つの‘見える化’」を実践することを提唱する。加えて何より、自分のためでなく誰かのため、社会のために何ができるかを考えるよう訴える。
「貢献する者こそが、すなわちWealthinkerだ」。未来の成功を目指す若い世代に、著者が発する熱いメッセージがここにある。
●目次
プロローグ
第1部 人生のどん底で芽生えた富のタネ
第2部 富を創り出す思考の根、Wealthinking
エピローグ
●日本でのアピールポイント
経営者による著作は日本でも数多いが、社会の空気が内向き志向の今、無一文から世界に羽ばたき成功した人のストーリーはあまりない。本書は、韓国主要インターネット書店で2021年末から22年上半期かけ自己啓発書部門ベストセラーとなり、マスメディアでも取り上げられるなど大きな注目を集めた。
富者になりたければ富者の思考を体得せよ――。そのメッセージは明確だ。どん底から這い上がってきた自身の経験を背景に、主な読者層と想定している若い世代へ、とにかく前向きに、ポジティブに人生に取り組むことを強く訴えている。‘Wealthinking’は、表面的ではない深い人生観に裏打ちされた思想と言っていい。
韓国生まれでヨーロッパを舞台に活躍する著者の存在は、日本ではほとんど知られていない。だが、日本の大学を卒業し、再起をかけて立ち上げた飲食事業では日本人の寿司職人を‘三顧の礼’を尽くして招き入れた知日派でもある。
彼女の地平に国境はない。グローバルな生き方とはどんなものなのか、体を張って見せてくれる本書は、今の時代だからこそ日本でも読まれるのではないだろうか。
(作成:金子博昭)