『おなじ? ちがう? カエルとサンショウウオ』(같을까?다를까?개구리와

原題
같을까?다를까?개구리와 도롱뇽
著者
アン・ウニョン (文、絵)
出版日
2016年2月20日
発行元
チョンゲエパラム(千の風)
ISBN
9788997984909
ページ数
36ページ
定価
11,000ウォン
分野
絵本

●本書の概略

カエルとサンショウウオを比べながら観察する生態絵本。
実況中継のようにわかりやすい文で成長過程を紹介し、気づきを促すよう読者に問いかける。両生類の不規則な皮膚模様や質感も本物らしく再現しつつ、やさしいタッチで描いている。

前半は見開き左にオタマジャクシ、右にサンショウウオとページを分割して描き、左右を見比べながらカエル、サンショウウオ、カエル、サンショウウオ・・・と読み進める構成。
後半は見開きを一つの画面とし、成体に近づくにつれ異なっていく二種の体のつくりを横から、下から、さらに拡大レンズを使ったように詳細に見せてくれる。卵の袋の形、しっぽとエラの有無と大きさ、泳ぎ方、水中と陸上での餌、敵、狩りの有無、前後の足の出方と指の数、しっぽの行く方、呼吸方法、陸への上がり方、交尾や産卵の方法と場所。どこが同じで、どこが違うのか。時にはオタマジャクシがサンショウウオの子に食べられる厳しい自然の秩序や交尾の秘密も赤裸々に見せる。
読者である子どもたちは、両者の違いと同時に両生類の一般的な生態の特徴を学ぶことになる。

●日本でのアピールポイント

カエルが陸に上がる場面や優しい色づかいがレオ・レオニ『さかなは さかな』を思い出させてくれる。本書では共に両生類でありながら「カエルはカエル」である点もあれば、共通点もあることを子ども自身に気づかせるねらいがあり、『かがくのとも』(福音館書店)的な絵本といえる。さらに『くらべる図鑑』(小学館)のような比べる楽しさもある。
サンショウウオをテーマに種の絶滅を危惧し水辺の環境保全を訴えたり、稀有な成長過程に注目した写真絵本などはすでにいくつか出版されている。しかし、より身近な両生類カエルとの対比をテーマに科学的な思考を育もうというコンセプトの本書はそれらとは一線を画したサンショウウオ本だ。

また、韓国の読者レビューにもある通り、この本を読むと水辺に出かけて行き、カエルやサンショウウオの卵を観察してみたくなる。ただ、残念ながら都市部で実物に出会うのは(水族館をのぞけば)かなり難しそうだ。
両生類、カエルの卵と聞いただけで鳥肌の立ちそうな方も、ステンシルの技法を使ったイラストは不思議と気味悪さがないのでぜひ一度手に取って開いてみてほしい。自然に限らず身の回りの様々な疑問に気づき、自分で考える子に育ってほしいと願うすべての方にお薦めできる。

(作成:湯原由美)

アン・ウニョン
友に出会うため自然の中を歩き回っては面白いお話を作るのが好き。甥と水辺でカエルとサンショウウオの卵に出会ったことから本書を構想。 作品に『ミミズの巣穴に入ってみる?』、『見つけた! 干潟の友だち』、『素敵なハンター トンボ』、『ふしぎな形あそび』、『夢』など。1972年生まれ。