●本書の概略
Fコードとは、世界保健機関(WHO)が作成した「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」のうち「精神及び行動の障害(F00-F99)」(いわゆる精神疾患)を指す。
本書は、記者として働く著者の、自らのうつ病の治療過程を中心につづったエッセイである。
4年前、突然うつ病となり「自分の人生は終わった」とまで思った著者だが、1年程度での回復を期待し治療に励む。しかし、4年経過後の現在も治療中であり、新たな症状(Fコード※)も加わっている。
それでも、自身の経験と専門家の意見に基づき、高血圧などのように「治療でコントロールしながら日常生活を送ることができる病気」だと明快に話す。
本書では、初めて受診した時の葛藤、自分に合う医師を見つけるまでの試行錯誤、治療に対する不安感など、患者であれば誰もが抱える困惑、恐怖心をありのままに伝える。また、うつ病が人間関係や恋愛、職場などの日常に及ぼす影響についても率直に語り「憂うつすぎず、つらすぎずに」暮らしていく方法を教えてくれる。
また、当事者の視点で、投薬治療の必要性や効果、心理療法の内容や役割、症状によっては入院治療が有効であることを、専門医へのインタビューなどを基に分かりやすい表現で説明している。さらに、病院の選び方など治療を受ける際の注意点や、治療過程で生じる様々な疑問に対する具体的なアドバイスも盛り込まれており、うつ病についての手引書としての役割も果たす。
●目次
1章 うつ病になってわかったこと
2章 病院にも行きますが、カウンセリングも受けます
3章 うつ病と言ってもみな同じではありません
4章 今日もうつ病と暮らしています
●日本でのアピールポイント
うつ病などメンタルヘルスに不安を抱える人は、日韓を問わず少なくないだろう。はっきりした理由もなくうつ病になった著者のように、誰にでも起こりうる病気である。
また、精神疾患は、症状に気付いてから速やかに対処や治療をすれば回復も早く軽症で済むことがわかってきたという。
著者は、早期受診の機会を逃し回復が遅れた友人の例や、周囲からの偏見が症状を悪化させる可能性についても説き、これからも病気についてオープンに話し続けると明かす。
精神疾患について、病状や治療についての知識不足によって「何となく怖い」イメージを抱いている人が多いことが、この病気に対する偏見の一因とも言える。
本書は、うつ病でつらい思いをしている人を温かく励まし具体的なアドバイスをするだけではなく、身近な病気であるうつ病について理解する大きな手助けになるだろう。
(作成:今野由紀)