おじいさんの家にはおばけがすんでる(할아버지 집에는 귀신이 산다)

原題
할아버지 집에는 귀신이 산다
著者
イ・ヨンア
出版日
2017年5月10日
発行元
クムキョ出版社
ISBN
9791185928111
ページ数
52
定価
14,800ウォン
分野
絵本

●本書の概略

釜山の絵本作家による釜山をテーマにした絵本。地方の作家がその地域に関する絵本を作るのは出版業界でもあまり例がないとされ、地方紙「釜山日報」でも取り上げられた。江戸時代に対馬から朝鮮・釜山に渡り病死した日本人の「おばけ」と、戦争の避難先の釜山で一人で暮らす韓国人のおじいさんが、次第に心を通わせていく物語。ユーモラスで明るく、心温まるタッチで描かれている。主に小学校低~高学年向け。

主人公は、韓国人のおじいさんと日本人の「おばけ」の二人。おじいさんは十四歳のとき朝鮮戦争の戦火を逃れ、故郷から一人で釜山に避難。住む場所がなく、日本人墓地の石材を利用して作った簡素な家で生活を始めた。後から避難してくるはずだった家族とは再会できず、故郷も北朝鮮の土地になってしまい帰れないため、60年間そのまま一人で暮らしていた。かたやおばけは、その墓の主「藤左衛門」。江戸時代に対馬で暮らしていたが生活が苦しく、金を稼ぐため家族を残して単身、朝鮮に渡る。釜山で商売をしていたが病死し、釜山で埋葬された。約100年後、物音で目を覚ますと、自分の墓の上におじいさんが家を建てていた―という設定。藤左衛門は自分の墓がここにあることを日本の子孫に伝えれば遺骨を日本に移してもらえるのではないかと思い、墓石探しをおじいさんに依頼する。最初は渋っていたおじいさんだが、互いに「家族と離ればなれのまま故郷に帰れずにいる」という共通点があることを知り、次第に心を通わせるようになる。最終的に墓石は見つかり、おじいさんによって手厚く供養されたことを思わせる絵で終わる。

●日本でのアピールポイント

著者は「学校教育などによって韓国の子どもは韓日の歴史や日本に対して固定観念を持っていると思うが、別の視点でも両国のことを見てほしい」との思いで物語を作ったという。おじいさんと藤左衛門が互いに共感し心を通わせる話を通して、日本の子たちも他者を理解しようとすることの大切さが感じられるのではないかと思う。幼い子も歴史的背景を抜きにして、茶目っ気たっぷりでユーモラスなおばけの話として楽しめるだろう。時代考証など準備に十分な時間をかけてあるため、大人も楽しめる作品だと思う。

釜山日報の姉妹紙、西日本新聞(本社・福岡)で紹介されたのを機に日本でも一部で話題となり、邦訳本の刊行を望む声も上がっていた。また、物語の舞台である釜山の「碑石文化村」は、人気観光地「甘川文化村」に近いこともあって日本人観光客も増えつつあり、邦訳に関心を持つ読者は一定数見込めるのではないかと思う。なお、この絵本を原作とした短編アニメ映画が現在、韓国で制作中である。

作成:牧野美加

著者:イ・ヨンア
漫画家を目指していたが、出産を機に子どもと一緒に楽しめる絵本の創作に関心を持つようになる。絵本(文・絵)の出版は本作が3作目。ソウル文化社主催「第1回新人漫画賞」(1997)、セクトン会主催「インターネット中毒予防創作童話銅賞」(2011)、第11回東西文学賞童話部門金賞(12)、「慶尚日報」新春文芸に童話『色紙の写真機』当選(14)。