『蒸気駆動の男──朝鮮王朝スチームパンク年代記』(チョン・ミョンソプ他/著、吉良佳奈江/訳、早川書房)

蒸気機関が導入され発達した、もうひとつの李氏朝鮮王朝。あるときは謎の旅人として、またあるときは王の側近として、歴史の要所要所で暗躍した蒸気駆動の男=汽機人〈都老〉の500年間にわたる彷徨を描いた、5篇を収録した異色のスチームパンクアンソロジー。
著者には『消えたソンタクホテルの支配人』(北村幸子/訳、影書房)、『記憶書店 殺人者を待つ空間』(吉川凪/訳、講談社)と邦訳本刊行が続くチョン・ミョンソプをはじめ、キム・イファン、パク・エジン、パク・ハル、イ・ソヨンらが名を連ねています。朝鮮王朝の歴史を新しい視点から楽しめるドキドキ感が堪らない一冊です。

翻訳者の吉良佳奈江さんから推薦コメントをいただきました。

この本は友人のMさんがtwitterに「SF大賞の受賞作がおもしろそう!ぜひ日本語で読みたい」と紹介していて、読んだところあまりの面白さにすぐに企画書を書き、編集者さんも一目で「版権取れたらGOです」と言ってくれた1冊。

朝鮮王朝の歴史の出来事を取り上げてその裏にこんな話があったかも…と想像するスチームパンク。巻末の年代表や物語の中には韓国文化のファンにとってはなじみ深い人や事物が数多く登場し、5つの作品は時代順に並んでいるので、読者は作中の蒸気技術の発達を朝鮮王朝の歴史と重ねて楽しむことができます。韓国に興味のない人が読んでも十分に楽しめます。韓国ファンにも文学ファンにもお勧めします。

『蒸気駆動の男──朝鮮王朝スチームパンク年代記』(チョン・ミョンソプ他/著、吉良佳奈江/訳、早川書房)