『長い長い夜』(ルリ/作・絵、カン・バンファ/訳、小学館)

一つの小さなたまごに
すべてをかけた
生きものたちの命の物語--

2021年韓国内でも人気を集め、多くの書店主たちもおすすめと太鼓判を押していた一冊です。児童書では異例の25万部を誇ったベストセラー。
動物たちの世界は優しくありながらも、時に厳しい現実を見せながら、その中でたくましく生き抜こうとする動物たちの姿に思わず感情移入。傍に寄り添い旅しながら、一緒に小さなたまごを見守った、そんな気持ちになりました。

何かと心落ち着かない日々に、爽やかな涙が心を浄化してくれるはずです。

翻訳者のカン・バンファさんから、メッセージをご紹介します。

韓国には、児童書は子どもが読むもの、という風潮がありました。ところが近年、児童書が大人のファンに読まれる、という現象が韓国でもちらほら見られるようになってきました。
そんななか、読者が「オススメ」どころではなく「必ず読んで」とコメントしていたのがこの本です。

開いたとたん、物語の強さに惹かれ、イラストの効果に胸が詰まりました。
「自分らしく生きること」はこれまでもたくさん語られてきましたが、ここまで原点にせまった作品もめずらしいのではないかと思います。
この本では、「自分らしさ」とは自分のいるべき場所のことであり、そこへ導いてくれる仲間があってこそのこと、さらに言えば、自分が生まれたことそのものが「自分らしさ」なのだと教えてくれます。

これまでたくさんの韓国文学を日本語に訳してきましたが、児童書は初めてです。あらためて翻訳の奥深さを知ることになった、貴重な経験でした。
編集の田中明子さま、最後まで丁寧にご指導いただき、ほんとうにありがとうございました。よりよい本づくりのためにアイディアを出しあう過程もとても楽しく、勉強になりました。

いまこの本を日本のみなさんのお手元に届けられることを、しあわせに感じます。
圧巻のラストまで、「命の物語」をじっくりご堪能ください。(カン・バンファ)

『長い長い夜』(ルリ/作・絵、カン・バンファ/訳、小学館)