『チェリーシュリンプ わたしは、わたし』(ファン・ヨンミ /著、吉原育子/ 訳、げみ/ 装画、金の星社)

韓国の10代女子の日常、心情を鮮やかに描きだすことで、すべての10代を応援する『チェリーシュリンプ わたしは、わたし』(ファン・ヨンミ /著、吉原育子/ 訳、げみ/ 装画、金の星社)。“「友だちが世界のすべて」という時期、友人関係に悩んでいるみんなに、あたたかいミルクティーを一杯いれてあげたいという気持ちで、この作品を書きました”と、著者は日本の読者への挨拶で語っています。新学期が始まり、そろそろ疲れも出る頃。まさに10代のみなさんに読んでいただきたい小説です。訳者の吉原育子さんからメッセージをいただきましたので、ご紹介します。

チェリーシュリンプ、聞き慣れない単語で、何のことかわからない人もいるかもしれません。熱帯魚店で売っている、体長2~3センチほどの小さなエビのことです。赤や黄、ブルーなど色もさまざまです。
この本の主人公、中学2年生の女の子ダヒョンは、新年度を迎えて、新しい友人関係に馴染もうと一生懸命です。
 10代の女の子の仲良しグループには、ちょっとやっかいな面があったりします。韓国の女の子たちも似たようなことで悩んだり、ぶつかったりしているようです。ダヒョンも、女子5人グループの中で、顔色をうかがったり、必死でみんなに合わせたり。本音は自分の非公開ブログ「チェリーシュリンプ」にしか書けません。一方、課題グループの男女メンバー3人とは、互いに認め合い、尊重し合える関係を築いていきます。
チェリーシュリンプが脱皮するように、ダヒョンが本当の自分の気持ちを表しはじめたとき、心を通い合わせることのできる友だちに出会っていきます。それは、自分らしさを受け入れてくれる場所です。
学校が世界のすべてだけれど、学校がすべてではない世界へと目を向け始める時期。友だちとの関係性を豊かに広げ、ダヒョンのように、私は私、と自分らしく生きていこうとする勇気をこの本は教えてくれます。
現役小中学生はもちろん、かつてその道を通ってきた大人たちにも共感のしどころが満載の物語です。おいしそうな韓国料理もたくさん登場します。韓国のリアルな中学生ライフ、ぜひのぞいてみてください。(吉原育子)

『チェリーシュリンプ わたしは、わたし』(ファン・ヨンミ /著、吉原育子/ 訳、げみ/ 装画、金の星社)